中小企業の人材不足を地域で解決！「地域の人事部」という新しい選択肢

現在、多くの中小企業が深刻な人手不足に直面しており、その対策として国が進めているのが「地域の人事部」という新たな取り組みです。本記事では、関東経済産業局の最新施策「地域の人事部」について、中小企業診断士としての視点から詳しく解説していきます。

この記事を読むことで、下記の点がわかります。

中小企業の人材に関する課題とは？

2022年に株式会社帝国データバンクが実施した調査では、中小企業が重要と考える経営課題の第1位は「人材の確保・育成」（82.7%）という結果が出ています。これは、営業力や販路開拓、組織体制よりも深刻に受け止められている課題です。

加えて、同調査によると、地域の中核企業（地域未来牽引企業）においても、人事・採用専任者がいない企業が4割近くにのぼっています。つまり、多くの企業が人材に関する専任担当を置けず、十分な採用活動や教育ができないまま経営を続けているのです。

リクルートワークス研究所の「2024年卒大卒求人倍率調査」によれば、従業員300人未満の企業の求人倍率は3.4倍から10倍超という水準で推移しており、そもそも応募が来ないという構造的課題があります。

加えて、採用できたとしても早期離職のリスクが高いことも、中小企業にとって大きな悩みです。企業文化の違いやキャリア形成の不透明さが原因となり、定着しづらい傾向にあります。

「地域の人事部」は、地域の中小企業が抱える人材課題を地域全体で解決するための取り組みです。民間事業者がハブとなり、自治体、商工会議所、教育機関、金融機関など地域の多様な関係者と連携して人材確保から育成、定着までを一気通貫で支援します。

この取り組みは、単なる就職支援ではなく、地域全体の人材循環を再設計し、将来的な地域経済の発展を目指す中長期の戦略でもあります。

石巻の水産業は震災や後継者不足により大きなダメージを受けてきました。その中で立ち上がったのが「一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン」です。彼らは地域の漁業従事者を「SeaEO（海の経営人材）」として採用し、地域ぐるみで人材育成を進めています。

単なる人材確保ではなく、ライフスタイルを含めた支援が定着率の向上につながっています。

過疎化が進む道東地域では、総合求人ポータルサイト「#道東ではたらく」を立ち上げ、地方の魅力を全国に発信する取り組みを展開しています。

地元ファンを巻き込みながら「地域ファン経済圏」を形成している好例です。

関東経済産業局では、関東地域で活動する「地域の人事部」事業者や中小企業支援者が一堂に会するミートアップイベントを開催します。

以下の公式サイトより申込フォームに入力してください。

地域の人事部は、いわば「外部の人事部」として中小企業の経営課題を一緒に解決する伴走者のような存在です。採用から育成、定着まで、総合的な支援を受けられる仕組みは、今後ますます地域経済において重要性を増していくでしょう。

中小企業が自社単独では難しいことも、「地域の人事部」という枠組みの中でなら実現可能です。ぜひ、地域のネットワークを活用し、新たな人材戦略を描いてみてください。

「人がいない」「人が育たない」「人が辞める」という悩みは、今や多くの中小企業に共通する深刻な課題です。

そんな中、地域全体で人材課題を解決しようという革新的な取り組みが「地域の人事部」です。成功事例に見るように、自治体・企業・支援機関が連携し、一体となって動くことで、人材課題に突破口を開くことが可能になります。

まずは、関東経済産業局が開催するミートアップに参加して、第一歩を踏み出してみませんか？