中小企業経営者にとって、設備投資や新製品・新サービスの開発を計画する際、資金調達は大きな課題のひとつです。そのような中、国の代表的な支援制度として注目を集めているのが、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」、通称「ものづくり補助金」です。
2025年7月25日より、第21次公募が開始されました。本記事では、公募要領の内容をもとに、本補助金の概要、応募のポイント、審査基準などを分かりやすく解説します。特に初めて申請される方にとって有益な内容になるよう、専門用語を避けて丁寧に解説していきます。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金https://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html
事業の目的
本補助金の最大の目的は、社会構造の変化に直面する中小企業・小規模事業者が、生産性の向上を実現し、持続的な成長を遂げられるよう後押しすることです。新しい製品・サービスの開発、海外市場への挑戦、革新的な設備投資を通じて、自社の競争力を強化する取り組みに対し、国が資金面で支援します。
経営の安定と拡大のカギを握るのは「付加価値の創出」と「市場の多様化」。本補助金はその両輪を支える制度です。
事業内容(高付加価値化枠・グローバル枠の違い)
A. 製品・サービス高付加価値化枠
この枠では、「革新的な新製品・新サービス」の開発に必要な設備・システム投資を支援します。既存の製品・サービスの改良ではなく、新たな市場価値を創出するチャレンジが対象です。
対象事業者:
国内に本社・事業所がある中小企業・小規模事業者で、以下の基本要件を満たすことが求められます。
基本要件:
- 付加価値額の増加要件:事業者全体の付加価値額の年平均成長率を3.0%(以下「付加価値額基準値」という。)以上増加させること。
- 賃金の増加要件【目標値未達の場合、補助金返還義務あり】:従業員及び役員それぞれの給与支給総額の年平均成長率を2.0%以上増加させること。又は従業員及び役員それぞれの1人あたり給与支給総額の年平均成長率を事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加させること。
- 事業所内最低賃金水準要件【目標値未達の場合、補助金返還義務あり】:事業所内最低賃金を、毎年、事業実施都道府県における最低賃金より30円以上高い水準にすること。
- 従業員の仕事・子育て両立要件(従業員数21名以上の場合のみ):「次世代育成支援対策推進法」第12条に規定する一般事業主行動計画の策定・公表を行うこと。
補助上限額:(下限:100万円)
- 従業員5人以下:750万円
- 6~20人:1,000万円
- 21~50人:1,500万円
- 51人以上:2,500万円
補助率:
- 中小企業:1/2
- 小規模企業・小規模事業者、再生事業者:2/3
補助対象期間:
交付決定日から10ヶ月(最大12ヶ月)
B. グローバル枠
この枠は、海外への事業展開や輸出、インバウンド対応、海外企業との共同事業など、国際的な取り組みに対する補助です。
対象事業者:
海外市場への進出に挑戦する中小企業で、以下のいずれかのグローバル要件を満たした上で、実現可能性調査の実施、または専門人材・外部専門家の活用が必要です。
グローバル要件 (グローバル枠に申請する場合の基本要件に加えた追加要件)※詳細の内容は募集要項を参照:
- 海外への直接投資に関する事業
- 海外市場開拓(輸出)に関する事業
- インバウンド対応に関する事業
- 海外企業と共同で行う事業
補助上限額:(下限:100万円)
一律3,000万円
補助率:
- 中小企業:1/2
- 小規模企業・小規模事業者:2/3
補助対象期間:
交付決定日から12ヶ月(最大14ヶ月)
特例措置について

補助金には、企業の取組状況に応じて「特例措置」による補助上限額の引き上げや補助率の増加があります。
【特例A】大幅な賃上げに係る補助上限額引上げ
要件:
- 賃金総額が年平均6%増を目標に設定
- 事業所内最低賃金を+50円以上に設定
上限引上げ額:
- 5人以下:最大+100万円
- 6~20人:最大+250万円
- 21~50人:最大+1,000万円
- 51人以上:最大+1,000万円
※目標未達の場合は返還義務あり。
【特例B】最低賃金引上げに係る補助率引上げ
補助率: 2/3(中小企業であっても補助率が引き上げられます)
※小規模企業や再生事業者、大幅賃上げ特例を申請している場合は適用不可。
助成対象事業の詳細
補助対象となる事業は、いずれの枠も以下の条件を満たすことが前提です。
- 顧客に新たな価値を提供する革新的な製品・サービスを創出する事業
- 生産性向上や収益性の改善につながる明確な計画
- 設備投資による明確な成果目標(売上、付加価値、賃金等)
特に「製品・サービス高付加価値化枠」では、すでに市場で普及している製品や模倣的な事業は対象外です。また、単なる機械導入のみで価値創出が不明確な計画も対象外となります。
助成対象経費の詳細
補助対象となる主な経費は以下のとおりです(税抜ベースで記載)。
- 機械装置・システム構築費(必須)
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
- 外注費
- 知的財産権関連費用(特許取得など)
※高付加価値化枠では500万円、グローバル枠では1,000万円までが設備以外の経費上限です。
※グローバル枠(輸出関連のみ)では、海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝費なども補助対象になります。
申請方法
本補助金の申請は、GビズIDプライムアカウントを利用した電子申請に限られます。未取得の方は、申請までに時間がかかるため早めの取得をお勧めします。
スケジュール:
- 公募開始:2025年7月25日(金)
- 電子申請受付開始:2025年10月3日(金)
- 申請締切:2025年10月24日(金)17:00【厳守】
申請に必要な主な書類:
- 基本情報(電子申請システムに入力)
- 事業計画書(A4サイズ5ページ以内のPDF)
- 各種契約書(共同開発等がある場合)
- 各種目標値の根拠資料 など
審査方法と評価ポイント
本補助金は、提出された事業計画書をもとに、外部有識者からなる審査委員会により書面審査および必要に応じた口頭審査が行われます。
審査で重視される主なポイント:
- 事業の革新性・独自性
- 生産性向上に対する明確な効果
- 経営体制・実行体制の妥当性
- 市場ニーズと収益性の高さ
- 目標の達成可能性と実現スケジュール
また、事業化後のフォローアップとして、事業化状況の定期報告も求められるため、実現性と持続性が重要視されます。
まとめ:今すぐ準備すべき理由
中小企業の競争力強化や海外市場への挑戦に必要な資金を公的に支援してくれる「ものづくり補助金」は、ビジネスチャンスを広げる貴重な制度です。
とくに本第21次公募では、「高付加価値化」と「グローバル展開」という2つの成長戦略に対して、それぞれの特性に応じた柔軟な支援が用意されています。さらに賃上げへの取組を通じた特例加算措置もあるため、成長意欲のある企業には絶好のタイミングです。
申請をお考えの方は、まずはGビズIDの取得、次に事業計画書の構想からスタートしましょう。
補助金を最大限に活用するためには、自社の課題と目標を明確にし、「なぜ今、その投資が必要なのか」を説明できることが鍵になります。
この記事は、経営者に役立つ補助金活用情報としてまとめました。ぜひこの機会に、自社の変革と未来への投資を進めてください。
また、申請を検討される場合は必ず募集要項をご確認の上、ご不明な点は事務局等はご確認下さい。