【新事業進出補助金 第1回公募の採択結果】採択傾向と今後のポイントを徹底解説!

補助金・助成金

中小企業基盤整備機構が実施する「新事業進出補助金」の令和7年度の第1回公募の採択結果が、10月に公表されました。

本記事ではその内容をもとに、応募・採択件数、業種や地域別の傾向、補助金申請額の分布、さらに採択案件の特徴をわかりやすく解説します。
これから第2回以降の申請を検討される中小企業・支援機関の方にとって、有益な情報をまとめています。


「新事業進出補助金」とは?〜概要と目的〜

新事業進出補助金は、「中小企業が既存事業とは異なる新分野・新市場へ進出する取り組み」を支援する補助金です。

目的は、単なる経営維持ではなく「生産性向上」「付加価値の創出」「賃上げへの波及」を促すことです。「事業再構築補助金」の経験を踏まえつつ、よりチャレンジ型・成長志向の補助金として位置付けられています。

補助対象は日本国内に本社・実施場所を有する中小企業や中堅企業で、製造業・建設業・卸売業・サービス業など幅広い業種が対象です。

補助金額は、従業員数毎に異なりますが、従業員数101人以上の場合で最大9,000万円(賃上げ特例の適用)を上限とし、設備投資、システム開発、販路開拓、人材育成などが支援対象となります。

この補助金の特徴は、「既存事業の延長ではなく、明確に異なる新分野展開」を求める点にあります。したがって、事業計画の策定にあたっては、単なる製品更新ではなく、「新しい市場・顧客・ビジネスモデル」を意識した提案が重要です。


応募件数と採択件数の概要

今回(第1回公募)では、全国から 3,006件の応募 があり、うち 1,118件が採択 されました。

採択率は 約37.2%。補助金の初回公募としては比較的高い水準で、挑戦意欲の高い事業が多く見られました。

特筆すべきは、「関税加点対象」590件 が含まれている点です。これは輸出促進や国際市場進出に資する取組に対する評価であり、グローバル展開を志向する企業の姿勢が顕著に現れています。


業種別の応募・採択状況

主たる業種(日本標準産業分類・大分類)で見ると、応募・採択のいずれも上位は以下の通りでした。

順位業種区分応募件数採択件数
1位製造業617件320件
2位卸売業・小売業458件166件
3位建設業433件158件
4位サービス業(分類外含む)316件77件

製造業は応募・採択ともに最多であり、特に「地域資源を活用した高付加価値製品開発」「AI・DXを取り入れた生産体制強化」などのテーマが多く見られます。

また、卸売・小売業では「EC化」「直販型ブランド構築」「観光・地域連携型ビジネス」など、消費者接点を強化する動きが目立ちました。

建設業では、環境対応や安全性を高めた設備更新に加え、「解体事業」「リフォーム」「地域インフラ維持型」への事業多角化が進んでいます。


都道府県別の応募・採択状況

応募数・採択数が多かったのは、東京都、大阪府、愛知県 でした。

上位地域のデータを抜粋すると以下の通りです。

都道府県応募件数採択件数
東京都571件199件
大阪府313件118件
愛知県208件83件
兵庫県144件48件
静岡県101件43件

都市部での応募が多い一方、北海道・福岡・宮城・広島など地方主要都市圏でも多数の採択があり、地域発の新事業創出が全国的に広がっている ことが分かります。

また、採択率が高い県としては滋賀・富山・石川など、製造業が集積する地域が目立ちます。


補助金申請額の分布

申請額の分布では、「2,000万円以上~2,500万円未満」が最も多く 763件(全体の約25%)

次いで

  • 「1,000万円以上~1,500万円未満」
  • 「500万円以上~1,000万円未満」
    の順でした。

採択件数もほぼ同様の傾向で、中規模規模の設備投資や新サービス開発への支援ニーズ が中心であることがわかります。一方、5,000万円近い大型申請や、500万円以下のスモールスタート案件も一定数見られ、企業規模・業種によって戦略の違いが明確でした。


採択案件の特徴分析

採択案件一覧を分析すると、いくつかの傾向が浮かび上がります。

 地域資源×高付加価値化

北海道の「えりも町ブランド魚EC販売」や、宮城県の「水産物高付加価値化事業」など、地域産品を活かしたブランド構築・観光連携型の新事業 が多数採択されています。

地域経済を支える中堅企業が、観光・食文化との融合により新市場を切り拓く動きが顕著です。

 環境・エネルギー・SDGs関連

秋田県の「木質バイオマス製造事業」や、群馬県の「CFRPリサイクル事業」など、脱炭素・循環型ビジネスへの取組も高評価。

環境配慮を前面に出した「持続可能なビジネスモデル」が採択傾向の一つとなっています。

 AI・DX・自動化への対応

全国的に「AI」「IoT」「ロボット化」「自動化ライン構築」などのキーワードが多く見られます。特に製造業や建設業では、人手不足対策と生産性向上を同時に狙うDX投資 が目立ちました。

 観光・宿泊業の再構築

観光業・飲食業では、「地域特産×体験型施設」「インバウンド対応」「宿泊施設の高付加価値化」など、ポストコロナを見据えた新たな観光価値創出事業が多く採択されています。

 連携型プロジェクトの拡大

複数事業者や支援機関が連携する案件が増加。認定支援機関(中小企業診断士、商工会議所など)が積極的に関与した「地域共創モデル」も高評価でした。


今後の申請に向けたポイント

今回の結果から見えてきた、次回以降の申請に活かせるポイントを整理します。

  1. 新市場・新顧客を明確に定義すること
     既存顧客への延長ではなく、新しい需要をどう創出するかを具体的に描くことが重要です。
  2. 地域・社会課題との関連性を示す
     地域振興、環境、DX、観光など、社会的価値を加えることで評価が高まります。
  3. 認定支援機関との連携を早期に
     事業計画書作成にあたっては、認定支援機関の助言を受けることが推奨されています。
  4. 補助事業の成果指標(売上・雇用・賃上げ)を明確に
     定量的な成果目標があるかどうかが採点に直結します。

まとめ 〜挑戦する企業を後押しする新たな制度〜

第1回公募では、全国3,000件超の応募があり、多様な業種・地域から新たな挑戦が生まれました。採択率は37%と、適切な計画と実現性を備えた企業がしっかり評価された印象です。

特に「地域資源の高付加価値化」「環境対応」「DX推進」など、中小企業が社会課題解決と成長を両立させる方向性 が強く打ち出されています。

次回以降の公募では、今回の傾向を踏まえたうえで、自社の強みを活かした「未来志向の新事業」づくりが鍵となるでしょう。

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