中小企業省力化投資補助金(一般型・第3回)の採択結果が、2025年11月28日に公表されました。本記事では、中小企業診断士の視点から 応募件数・採択件数・業種別傾向・都道府県別の状況・申請額分布・採択案件の特徴分析 を詳しくまとめています。
今回の採択結果は、今後申請を検討する中小企業・小規模事業者にとって、どのような設備投資が評価されやすいかを掴む上で非常に参考になります。
省力化補助金は、深刻化する人手不足に対する国の重点施策の1つであり、 生産性向上・省力化・自動化 といったキーワードがより強く求められていることが、今回の採択結果からも明確に読み取れます。
中小企業省力化投資補助金(一般型)の概要
(公式サイト:https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/about/)
本補助金は、中小企業・小規模事業者が行う 省力化・省人化を目的とした設備投資 を支援する制度です。特に、人手不足が深刻な業界において、機器・システムの導入を通じて業務効率化を実現する取り組みを支援することを目的としています。
主なポイントは以下のとおりです。
- 補助率、補助上限額:1/2以内(上限1億円)※補助率、補助上限額は企業規模や条件によって異なる
- 対象:中小企業・小規模事業者・中堅企業
- 対象設備:省力化に資する機械設備・システム等
- 目的:人手不足解消、業務効率化、生産性向上
一般型は、比較的多くの事業者が利用できる枠として位置付けられており、幅広い業種での活用が進んでいます。
応募件数・採択件数の概要(第3回)
応募件数
➡ 2,775件
採択件数
➡ 1,854件
採択率は 約66.8% と比較的高めですが、採択事業者の傾向を見ると「単なる機器更新」ではなく、明確な省力化効果を伴う設備導入が強く評価されていることが分かります。
主たる業種別の応募・採択状況(大分類)
採択件数の割合は以下の通りです。
採択が多い業種
- 製造業:51.3%
- 建設業:15.5%
- 卸売業:5.3%
- 学術研究・専門/技術サービス:4.2%
- 小売業:3.9%
製造業が約半数を占めており、省力化ニーズが強い現場作業の自動化・搬送ロボット・検査の自動化などの取組みが多く採択されています。
その他の業種
飲食・宿泊、生活関連サービス業、運輸・郵便業、医療・福祉なども含まれ、多くの業種で省力化投資へのニーズが広がっていることが分かります。
都道府県別の採択件数(上位)
採択件数が特に多い地域は以下の通りです。
- 大阪府:182件(9.8%)
- 東京都:167件(9.0%)
- 愛知県:147件(7.9%)
- 兵庫県:77件(4.2%)
- 埼玉県:77件(4.2%)
大都市圏を中心に、製造業・建設業・サービス業等の幅広い業種から申請されている特徴が見られます。
補助金申請額の分布
採択者の補助金申請額の分布(PDFより)では、以下の傾向が明確です。
- 1,500万円~1,750万円未満が最も多い(20.7%)
- 次いで 750万~1,000万円(14.3%)
- 1,000万~1,250万円(11.3%)
- 2,000万~3,000万円(11.3%)
一般型は最大1億円まで申請可能ですが、実際には 1,500万円前後の省力化投資が最も多い ことが分かります。
中小製造業や飲食・小売業で、
「工程の一部自動化」「調理機器・包装機器の導入」
など中規模の設備投資が中心となっていることがうかがえます。
実際に採択された案件の概要(3つ紹介)
PDFに掲載されている「採択案件の概要」から、代表的な3事例を選び紹介します。
製造業:在庫管理・出荷作業の自動化
- 仕掛品や在庫管理を人手で行っており非効率
- 自動化により作業時間を 80時間 → 20時間へ(1/4)
- 担当者を新規ラインに再配置し増産・コスト削減を実現
→ 工場内の搬送・管理の自動化は高く評価されやすい典型事例
宿泊業:オーダーメイド清掃ロボットの導入
- 汎用ロボットが施設特性に合わず清掃の自動化が困難
- オーダーメイドの清掃ロボットを導入
- 清掃時間を 90%削減
- 従業員の時間をホスピタリティ業務に再配分し顧客満足度向上
→ サービス業でも「省人化×付加価値向上」の両立が評価される
倉庫業:自動仕分けロボット(オムニソーター)の導入
- すべて人力で仕分けしておりヒューマンエラーが多発
- 自動仕分けロボットを導入し再作業を大幅削減
- 仕分け人員を 約50%削減
- 従来の4倍の作業量に対応可能に
→ 物流業の自動化は費用対効果が高く採択されやすい
採択案件の特徴分析(事業計画名より)

採択一覧から事業計画名を分析すると、以下のキーワードが多く見られます。
(例:AI、DX、ロボット、自動化、セントラルキッチン、省力化システム 等)
特徴① AI活用・デジタル化(DX)が急増
- 「AIエージェントによる業務効率化」
- 「AI見積自動作成システムの導入」
- 「営業管理システム」「統合管理プラットフォーム」
AIを活用した 見積作成・受発注管理・在庫管理 が増加している点が特徴的です。
特徴② ロボット・自動化設備の導入が多数
- 自動洗浄ライン
- パレタイジングロボット
- AMR(搬送ロボット)
- 自動仕分けロボット
- 清掃ロボット
現場の省力化を直接実現する「物理的な自動化」が依然として主流です。
特徴③ セントラルキッチン化・食品加工の自動化
- 「セントラルキッチン導入」
- 「自動計量包装機の導入」
飲食・食品小売業では、
仕込み作業の集約化 × 自動化
という流れが明確です。
特徴④ データ連携・システム統合
- 「統合管理プラットフォーム」
- 「営業システム統合」「基幹システム連携」
既存システムとの連携を重視した投資も評価されています。
まとめ:第3回の採択結果から見える今後のポイント
今回の採択結果(応募2,775件・採択1,854件)から、中小企業省力化投資補助金(一般型)では以下の傾向が明確になりました。
① 製造業・建設業が中心だが、全業種へ拡大
サービス業・飲食・物流など、幅広い業種で採択されている。
② 自動化・ロボット導入は依然として強い
搬送、包装、検査、清掃など「人手不足の根幹」を解決する取組みが評価。
③ AI・DX投資が急成長
AI見積システム、基幹システム統合、営業管理の自動化などが目立つ。
④ 投資額は1,500万円前後が中心
中規模クラスの設備投資が最も多い。
⑤ 付加価値向上まで踏み込んだ計画が採択されやすい
単なる省力化ではなく、
売上向上・顧客満足向上・品質向上
までを見据えた計画が評価されている。
今回の分析が、皆さまの次回以降の申請戦略や設備投資の検討に少しでもお役立ていただければ幸いです。

