東京都では、テレワークの導入・定着を支援する「テレワークトータルサポート助成金」の令和7年度版の募集が始まりました。本記事では、中小企業の経営者とその支援者に向けて、この助成金の目的・内容・申請要件・注意点をわかりやすくご紹介します。
なぜこの助成金が実施されるのか?|テレワーク普及の社会的背景
テレワークの推進は、単なる働き方改革ではなく、「少子高齢化社会への対応」「育児・介護と仕事の両立支援」「労働力確保」「BCP(事業継続計画)対策」「通勤ラッシュ緩和」「地球温暖化対策」など、社会的課題の解決にも直結しています。
東京都ではこうした背景を受けて、特に中小企業がテレワークを導入・定着させやすくするための支援策として、本助成金を設けています。令和7年度も引き続き、情報通信機器の導入や、育児・介護・職場環境といった企業内の多様な課題に対応した加算制度を整備し、実効的なテレワーク環境の整備を後押しします。
助成金の概要|対象経費や金額、申請要件を解説
●申請受付期間
令和7年6月10日(火)~令和8年2月27日(金)
※郵送または電子申請(jGrants)
●助成対象者の条件(要約)
- 都内で事業を営む中堅・中小企業(常時雇用する労働者数999人以下)
- 都内に常時雇用労働者を2名以上雇用していること(うち1名は6か月以上在籍かつ雇用保険加入)
- 都税の未納がないこと
- 「テレワークトータルサポート事業相談窓口」の利用が必須
- 就業規則にテレワーク規定が未整備であること(加算項目申請の場合)
●必須項目「テレワーク環境の整備」
在宅勤務・モバイル勤務のための以下の経費が対象となります。
助成対象経費(一部)
- パソコンやタブレット等の機器購入費(1,000円以上10万円未満)
- テレワーク用ソフトウェアの使用料(3か月分まで)
- 機器の設置・設定費用
- リース・レンタル料(3か月分まで)
助成率と上限
- 労働者2~29人:上限150万円(助成率3分の2)
- 労働者30~999人:上限250万円(助成率2分の1)
●加算項目①「育児・介護コース」
内容
3歳未満の子を育てる、または介護を行う従業員がテレワークできる制度を整備した企業に対し、定額支給。
支給額(定額)
- 20万円
条件
- 指定された研修動画(3時間程度)の視聴
- テレワーク規程(労働時間・情報管理・費用負担等)の整備
- 規程の労基署への届出および社内周知
●加算項目②「職場環境改善コース」
内容
テレワークが困難な職種(屋外作業等)に従事する労働者向けに、熱中症対策製品を導入する企業に支給。
対象製品例
- 遮熱ヘルメット
- 電動ファン付き作業服
- クールベスト、水冷服
- 熱中症予防ウェアラブルデバイス
助成上限額
- 1人あたり最大1万円 × 対象者数(上限50万円)
- 助成率:10分の10(全額)
※ただし単価1,000円以上10万円未満の製品に限ります。
実際の活用事例から見る、助成金の使い方
東京都の公開資料によると、過去に採択された企業では以下のような事例が見られます。
事例①:建設業(従業員25名)
東京都内で現場を持つ中小建設会社が、事務職員の在宅勤務化に向けてノートPCやVPN機器を導入。職場環境改善コースも併せて申請し、現場作業員向けにファン付き作業服と遮熱ヘルメットを導入。熱中症対策と事務作業の効率化を両立。
事例②:IT企業(従業員40名)
子育て中の社員が多いITベンチャー。加算項目①を活用し、育児中社員向けに柔軟な在宅勤務制度を整備。助成金により、制度設計のための研修受講や、制度周知のための社内説明会も実施。
事例③:製造業(従業員60名)
設計部門の社員にCADソフトを導入し在宅勤務を可能に。導入後は、紙ベースで行っていた工程もデジタル化が進み、全体の業務効率が向上。
申請時の注意点と成功のポイント

本助成金は書類の不備や制度理解不足によって、申請が却下されるケースも少なくありません。以下の点に注意しましょう。
- 事前に契約・購入・設置したものは対象外
- 必ず相談窓口を利用し、「利用証」を取得する
- テレワーク勤務実績が6回未満だと減額対象
- テレワーク東京ルール実践企業宣言制度への登録が必須
また、加算項目を希望する場合は、コンサルティングや規程の整備・研修受講といった追加要件にも注意が必要です。
中小企業にとっての意味と今後の展望
テレワークは単なる一時的な働き方の代替手段ではなく、労働力確保や職場環境整備に資する戦略的な手段です。今回の助成金は、特に制度整備に踏み出せない企業にとって、絶好の機会です。
東京都の支援は資金面のみならず、制度設計やコンサルティングを通じて中小企業の内側からの変革を後押しする仕組みとなっています。
今後も、テレワークを軸とした柔軟な働き方が求められる時代のなかで、本助成金のような施策をうまく活用して、持続可能で多様性のある職場づくりを目指していくことが重要です。
まとめ
令和7年度「テレワークトータルサポート助成金」は、東京都内の中小企業がテレワークを導入・定着させるための強力な支援策です。基本的なICT環境整備に加え、「育児・介護支援」「職場の熱中症対策」にも対応できる加算制度が用意されています。
テレワーク導入に迷っている企業も、まずは相談窓口を利用してみることからスタートしてみてはいかがでしょうか?
申請を検討される際には、募集要項をご確認の上、ご不明な点は事務局へご確認下さい。https://www.koyokankyo.shigotozaidan.or.jp/jigyo/telework/teletotal/boshu/07_total.files/07_teletotal_denshi_boshuyoko.pdf