テレワークの定着とともに、働き方の多様化が進む今、オフィスにも変革が求められています。
東京都では、令和7年度も「ABW(Activity Based Working)」の導入を支援する「ABWオフィス促進助成金」を実施しています。本助成金は、中小企業がABWを取り入れた柔軟な働き方を実現するオフィス改修・整備を行うための費用を支援する制度です。
この記事では、本助成金の全体像から申請要件、助成金の審査・採択のポイント、さらには助成対象となるABWオフィスエリアの例まで、中小企業診断士の視点からわかりやすく解説します。
事業概要と全体の流れ|ABW導入支援から助成金までのステップ
「ABWオフィス促進助成金」は、ただオフィスを改修するための費用を補助するだけでなく、導入前から専門家による支援を通じてABWの仕組みそのものを社内に根付かせることを目的としています。
全体の流れは以下の通りです:
- ABW導入支援への申込
- 専門家による伴走支援(ABW導入計画の策定)
- 「ABW導入提案書」の取得
- ABWオフィス整備に係る助成金の申請
- オフィス改修・導入と事例の情報発信
このように、助成金だけでなく、組織内での取り組みや制度整備も含めた包括的な支援が用意されています。
本事業を実施する背景|ABWの必要性とは?
パンデミック以降、テレワークの普及により、「出社=業務の中心」という概念が変わりました。その中でABWは、「業務内容に応じて働く場所・時間を自律的に選べる」新しい働き方として注目されています。
ABW導入のメリットは以下の通りです:
- 従業員満足度の向上(ES)
- オフィススペースの最適化・効率化
- チームの創造性やコミュニケーションの活性化
- 柔軟な働き方の推進による人材確保
東京都では、こうした働き方改革を後押しするために、中小企業等を対象に本助成制度を展開しています。
ABWオフィス促進助成金の概要
■ 申請期間
- ABW導入支援の申込受付:令和7年6月3日(月)〜7月31日(水)17:00まで
- 助成金申請は「ABW導入提案書」の取得後、別途案内されます。
■ 申請要件(主な条件)
- 都内に本社または事業所を持つ中小企業等
- 常時雇用の従業員が2名以上(うち1名以上は雇用保険加入・6ヶ月以上勤務)
- 就業規則にテレワーク制度とフレックスタイム制を導入し、労基署に届け出ていること
- 「ABW導入提案書」を取得済みであること
- 都税の滞納がないこと
■ 対象経費(助成の内容)
経費区分 | 内容の一例 |
---|---|
改修費 | パーティション工事、エリア区分用カーペット、什器固定など |
機器導入費 | クラウドPBX、WEB会議用機器、音響設備、勤怠・座席予約管理システム |
子連れ出勤整備費 | ベビーチェア、絵本ラック、クッションマット 等 |
■ 助成限度額・助成率
区分 | 限度額 | 助成率 |
---|---|---|
オフィス整備費 | 最大2,000万円 | 経費の3分の2以内 |
子連れ出勤対応加算 | 最大5万円 | 経費の10分の10 |
助成金の審査方法
導入支援に関する書類・面接審査を経て、最大5社が支援対象事業者として採択されます。その後、専門家の支援を受けて「ABW導入提案書」を策定。これをもとに助成金の申請を行う形となります。
助成金自体にも審査がありますが、導入支援の段階で具体的な計画をまとめるため、採択率を高めるポイントは事前準備にあります。
採択されるためのポイント

助成採択を目指すうえで重要なのは、以下の観点を計画にしっかり盛り込むことです。
● 経営課題との連動性
- ABWを導入する理由が、自社の課題(人材確保・離職防止・業務効率化など)と明確にリンクしていること。
● 従業員の参画体制
- 経営層と現場のメンバーを含めた社内プロジェクトチームの設置が必須です。
● 勤務制度の整備内容
- フレックスタイム制の導入、テレワーク制度のルール整備など、ABWの前提となる就業制度が整っていること。
● 効果検証の方法
- アンケート調査やKPI設定により、導入の効果を見える化できる仕組みを整備していると評価が高まります。
助成対象例|ABWオフィスエリアの具体例
助成金は、ABWを実現するオフィス環境に必要な設備や什器が対象です。以下は代表的なエリアとその例です。
エリア名 | 主な目的 | 什器・設備例 |
---|---|---|
ワークスペース | フリーアドレスで自由に作業 | デスク、椅子、荷物置きワゴン |
集中スペース | 個別作業に特化した静かな環境 | 個室ブース、モニター、防音パーテーション |
対話ブース | WEB会議・1on1の対応 | 会議ボックス、半個室ブース、スピーカー |
チームセッションエリア | チーム作業・打ち合わせ | 昇降デスク、ホワイトボード、モニター |
コミュニケーションエリア | リラックス&交流 | カウンターテーブル、ハイチェア、ソファ |
イベントスペース | プレゼンや社内報告会 | 可動式テーブル、スクリーン、プロジェクター |
ユーティリティスペース | 備品・書類管理 | ロッカー、キャビネット、ハンガーラック |
子連れ出勤エリア | 育児と仕事の両立支援 | ベビーチェア、サークル、絵本ラック |
こうしたエリアを有機的に組み合わせることで、「どこでも働ける」「誰でも活躍できる」柔軟なオフィス空間が実現します。
まとめ|働き方改革の本質は“場づくり”から。今こそABWを始める絶好の機会
ABWは単なるレイアウト変更ではなく、企業文化や働き方のあり方を変える全社的なプロジェクトです。
「働きやすい環境を整えたい」「人材定着を図りたい」「イノベーションが生まれる場をつくりたい」と考えている企業にとって、本助成金は非常に強力な後押しとなります。
- オフィス改修のための高額な投資が可能に
- 無料で専門家の支援を受けながら計画を策定
- 助成額最大2,000万円、助成率2/3
柔軟で多様な働き方に対応したオフィス整備は、従業員にとっても企業にとっても未来への投資です。
申込期限は令和7年7月31日まで。お早めのご準備をおすすめします。
申請をご検討の方は募集要項をご確認の上、ご不明な点は事務局へご確認下さい。https://abw-sokushin.jp/subsidy/
公式サイト・申込フォーム: https://abw-sokushin.jp
問い合わせ先: 公益財団法人東京しごと財団 テレワーク促進課
電話:03-4567-6652(平日9:00〜17:00)