【最新調査で明らかに】中小企業が直面する経営課題と打ち手とは?~2024年度アンケートから読み解く~

政策

「売上は伸びているのに、利益が残らない…」
「後継者問題に悩んでいるが、なかなか話を進められない」
「業務効率化を進めたいけれど、何から手を付ければいいのか分からない」

これは、実際に中小企業の経営者から寄せられるリアルな声です。

2024年12月、東京商工会議所が発表した「中小企業の経営課題に関するアンケート」調査結果では、こうした経営者の悩みや課題が明確に示されています。本記事では、報告書の内容をもとに、特に注目すべきポイントを解説し、これからの対策について考察します。

東京商工会議所「中小企業の経営課題に関するアンケート」調査結果https://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=1204926

売上は増えても利益が残らない?収益構造に潜む落とし穴

まず注目すべきは、売上と利益の乖離です。調査によると、2024年1~9月の売上高が「前年より増加した」と答えた企業は44.8%。特に飲食・宿泊業(55.6%)や運輸業(54.8%)では、過半数が売上増を実感しています。

しかしながら、コストの上昇も深刻です。原材料、エネルギー、人件費、その他経費のいずれも、7割前後の企業が「上昇している」と回答。結果、直近の収益状況をみると、黒字企業は59.2%と微増した一方で、赤字の割合は依然2割を超えており、コロナ前に比べて約10ポイント高い状態が続いています。

「売上増=利益増」にはなりにくい構造が明確に表れているのです。

経営戦略を持つ企業の方が成長している

また、経営戦略の策定有無が業績に直結している点も興味深いです。戦略を「策定している」と回答した企業は58.7%。そのうち、売上が「増加した」と答えた割合は48.7%で、戦略を持たない企業(39.3%)を約9ポイント上回りました。

さらに、戦略を定期的に見直している企業ほど、成長の成果が見えやすく、毎年見直している企業が6割を超えているのも特徴です。

成長のカギは「人材」「商品開発」「販売方法」

2020年以降に新たな成長に向けた取り組みを行った企業は、全体の78.9%。中でも多かったのは以下の3点です。

  • 人材の採用・教育の強化(38.2%)
  • 新製品・新サービスの開発(31.4%)
  • 商品・サービス提供方法の改善(24.8%)

これらの取り組みによる成果として、「販売数量・取引先の拡大(41.4%)」や「競合との差別化(35.9%)」が挙げられており、戦略的な投資の効果が見て取れます。

デジタル活用・省力化にも課題が山積

業務の効率化や省力化については、約8割の企業が何らかの取り組みを行っていると回答しています。最も多かったのは「デジタル活用(36.9%)」。業務ソフトの導入やRPA、自動化への投資が進められています。

しかしながら、課題も顕著です。

  • 人手不足(41.9%)
  • 従業員のスキル不足(37.2%)
  • 社内ノウハウの欠如(28.3%)

といった人的課題が大半を占め、特に小規模企業では「そもそも効率化するべき業務がない」との回答も目立ちました。

資金繰りと債務に悩む企業も多数

資金繰りに関する回答では、「資金繰りが苦しい」と感じている企業が32.8%。小規模企業に限ると、その割合は44.8%に達しています。

さらに、「債務過剰感がある」と回答した企業は36.5%。黒字企業であっても、23.2%が債務に苦しんでいるという事実は見逃せません。

この背景には、コロナ禍での借入増加や、返済フェーズへの突入があると考えられます。

また、「経営者保証に関するガイドライン」の認知度が低く、34.8%が「知らない」と回答。制度を知っていれば、保証なしで融資が受けられる可能性もあるため、周知の重要性が浮き彫りになっています。

価格転嫁が進まない現実

物価・人件費の上昇に対して、コストを販売価格に転嫁できているかという問いには、次のような結果が出ました。

  • 原材料・仕入費用で「4割以上転嫁できている」企業は36.0%
  • エネルギー費用は23.9%
  • 労務費・人件費は25.5%

といった具合で、費目によって大きな差がありました。

特に問題なのは、取引階層が深くなるほど価格転嫁が困難になる点です。BtoBの二次・三次下請に至っては、「全く転嫁できていない」という声が多く、構造的な課題が露呈しています。

事業承継は「考えているが進められない」企業が多数

事業承継については、「既に後継者を決めている」「候補がいる」とした企業は45.3%でしたが、依然「後継者を決めていないが、事業継続を希望する」企業が34.1%存在します。

後継者候補としては、「自社の役員・従業員」が32.7%と増加傾向にあり、親族承継一辺倒ではない流れが見られます。

また、50代以下では「まだ考える年齢でない」という回答が多いのに対し、60代以上では「承継したい人材がいない」「後回しにしている」という声が目立ちました。計画的な承継の必要性が再認識されます。

中小企業からの声:リアルな現場の苦悩と希望

報告書には、企業から寄せられた切実な声も紹介されています。

  • 「物価高騰で賃上げできず、社員に申し訳ない」(スポーツ用品卸売)
  • 「補助金の要件を緩和して、省力化投資をしやすくしてほしい」(食品製造業)
  • 「価格交渉の際、大量の資料提出を求められ、負担が大きい」(製造業)
  • 「コロナで膨らんだ借入が、今の成長の足を引っ張っている」(飲食業)

こうした声に対し、制度面・資金面・情報面の支援が必要不可欠です。

まとめ:課題は山積だが、変化に挑む企業も増えている

2024年の「中小企業の経営課題に関するアンケート」調査から見えてきたのは、課題の複雑化と、それに対抗するための前向きな企業努力です。

  • 成長に向けた投資を行う企業が増加
  • 経営戦略を策定している企業ほど成果が出ている
  • コスト上昇と価格転嫁の間にギャップがある
  • 事業承継や資金繰りの対策はまだ不十分

これからの支援施策には、「情報提供」「伴走型支援」「補助金・融資制度の柔軟化」など、現場に寄り添った対応が求められます。

本ブログが、経営者や支援者の皆さまにとって、今後の経営方針を考える一助となれば幸いです。

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