【2025年最新】中小企業の経営課題を調査結果から読み解く|経営実態と今後の対応策

政策

2025年を迎え、中小企業を取り巻く経営環境は売上回復の兆しが見られる一方で、原材料費や人件費の高騰、価格転嫁の難しさ、人手不足、さらには事業承継問題など、 中小企業の経営課題は一層複雑化しています。

東京商工会議所が2025年12月11日に公表した 「中小企業の経営課題に関するアンケート」調査結果は、 こうした中小企業の経営実態を客観的なデータとして明らかにする貴重な資料です。

本記事では、中小企業診断士の立場から、この調査結果を丁寧に読み解き、 現在の中小企業が直面している課題と、今後の経営判断にどのように活かすべきかを詳しく解説します。

中小企業の経営課題に関するアンケート調査の概要

本調査は、東京23区内の中小企業・小規模企業10,000社を対象に実施され、 1,756社から回答を得ています。回答率は17.6%で、うち約半数が小規模企業です。

製造業、建設業、卸売業、サービス業など幅広い業種が含まれており、 日本の中小企業の経営環境を把握する上で、非常に示唆に富む内容となっています。

 回答企業の属性から見える中小企業の経営実態

回答企業の特徴を見ると、従業員20人以下の企業が約65%を占めており、 いわゆる小規模企業が多数を占めています。また、業歴50年以上の企業が約4割に達しており、 長年地域経済を支えてきた企業が多いことも特徴です。

  • 製造業・卸売業・建設業を中心とした業種構成
  • 従業員20人以下の小規模企業が多数派
  • 業歴が長い企業ほど事業承継問題を抱えやすい

これらの属性を踏まえると、短期的な業績だけでなく、 中長期的な経営課題への対応が強く求められていることが分かります。

中小企業の売上は回復基調だが、収益面は依然として厳しい

 売上高の推移から見る中小企業の現状

2025年1月から9月までの売上高を前年同期と比較すると、 「増加した」と回答した企業は43.8%に達しました。 「減少した」とする企業は20.7%にとどまり、 全体としては中小企業の売上回復が進んでいるといえます。

特に建設業や飲食・宿泊業では、売上増加の割合が5割を超えており、 コロナ禍からの反動需要や社会経済活動の正常化が影響していると考えられます。

 コスト上昇が中小企業の利益を圧迫する構造

一方で、経営者の多くが頭を悩ませているのがコストの上昇です。 調査では、原材料費、エネルギー費、人件費、その他経費のすべてにおいて、 「上昇している」と回答した企業が高水準となっています。

  • 原材料・仕入価格の高止まり
  • エネルギー価格の継続的な上昇
  • 人手不足による人件費の増加

その結果、売上が回復しても利益が思うように残らず、 赤字企業の割合は約2割で定着しています。 特に小規模企業では、黒字割合が5割程度にとどまっており、 中小企業の経営課題がより深刻であることが分かります。

成長意欲は高まる一方で、企業間格差が拡大

 中期的な事業方針に見る中小企業の成長戦略

中期的な事業方針について「拡大」と回答した企業は44.7%となり、 2018年以降、増加傾向が続いています。 これは、多くの中小企業が現状維持ではなく、 成長を目指していることを示しています。

特に経営者の年齢が若いほど「拡大」と回答する割合が高く、 世代間で成長意識に差が見られる点も特徴的です。

 新たな取り組みの実態と課題

直近1年間の新たな取り組みとしては、 「新製品・新サービス開発」「商品・サービス提供方法の改善」が上位に挙げられました。

一方で、前期収支がトントンまたは赤字の企業では、 「特に実施した取り組みはない」と回答した割合が36.8%にのぼっています。

この結果からは、

  • 黒字企業ほど成長投資やDXに積極的
  • 収益に余裕のない企業ほど将来投資が難しい

という中小企業間の格差が、より鮮明になっていることが読み取れます。

中小企業のDX・業務効率化は次の段階へ

 省力化・業務効率化の取り組み状況

省力化・業務効率化に取り組んでいる企業は76.6%に達しており、 多くの中小企業が人手不足への対応として業務改善に取り組んでいます。

特に効果が出ている業務としては、 総務・財務・経理、人事・労務といったバックオフィス業務が上位に挙げられています。

 今後求められる現場業務の効率化

今後効率化が必要とされている業務では、 営業・接客、受注・在庫管理、生産・施工など、 売上や付加価値に直結する業務が多く挙げられました。

一方で、省力化に取り組んでいない企業の約半数は 「今後も必要性を感じていない」と回答しており、 意識面での二極化も進んでいます。

価格転嫁は依然として中小企業最大の経営課題

 価格転嫁の進捗状況

コスト上昇分について「4割以上価格転嫁できている」と回答した企業は37.6%にとどまり、 前年から大きな改善は見られませんでした。

特に労務費・人件費、エネルギー費については価格転嫁が難しく、 中小企業の価格転嫁は依然として深刻な課題です。

 希望する価格設定ができない実態

主要製品・サービスについて「希望する価格設定ができていない」と回答した企業は45.2%でした。 運輸業やサービス業では6割前後に達しており、 価格決定力の弱さが経営を圧迫しています。

事業承継問題は中小企業の将来を左右する重要課題

 後継者未定でも事業継続を望む企業の実情

「後継者を決めていないが、事業は継続したい」と回答した企業は28.7%にのぼります。 特に50歳代・60歳代の経営者では、 事業承継を後回しにしている傾向が顕著です。

事業承継税制に対する理解不足

事業承継税制の特例について「よく分からない」と回答した企業は35.1%に達しました。 制度の分かりにくさや情報不足が、 中小企業の事業承継を難しくしている要因の一つといえます。

調査結果から中小企業経営者が考えるべきポイント

今回のアンケート調査結果は、 2025年時点の中小企業の経営実態を非常に明確に示しています。

売上回復に一喜一憂するのではなく、 価格転嫁、業務効率化、成長投資、事業承継といった 中長期的な経営課題に計画的に取り組むことが、 これからの中小企業経営において不可欠です。

まずは自社の立ち位置を正しく把握し、 どの経営課題を優先的に解決すべきかを整理することが、 持続的成長への第一歩となるでしょう。

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