中小企業の経営者や支援者にとって、「人手不足への対応」と「生産性の向上」は常に大きな課題です。こうした課題解決のために、中小企業基盤整備機構が実施しているのが「中小企業省力化投資補助事業(一般型)」です。
本記事では、第4回公募のポイントを整理し、補助金の目的・対象者・金額・申請方法・審査の観点までを詳しく解説していきます。専門的な制度ではありますが、可能な限り分かりやすくまとめていますので、制度活用を検討する際の参考にしてください。
事業の目的
この補助事業の最大の目的は、中小企業等が人手不足に対応するための省力化投資を促進し、生産性の向上や賃上げにつなげること にあります。具体的には、IoT・AI・ロボットなどのデジタル技術を活用したオーダーメイド設備やシステムを導入する際の費用を補助する仕組みです。
単なるコスト削減ではなく、設備導入による 付加価値額の増加、そして従業員の 賃金水準の引き上げ までを見据えている点が特徴的です。これにより、企業の持続的成長と従業員の処遇改善を両立させることを狙っています。
補助対象者と対象事業の概要
補助対象者は、日本国内で事業を営み、本社と補助事業の実施場所を有する中小企業・小規模事業者・一定の組合・NPO法人・社会福祉法人などです。資本金や従業員数の基準は「中小企業基本法」に準じて設定されています。
補助対象となる事業は、生産や業務プロセス、サービス提供の方法を省力化するための設備導入。特に 事業者の個別課題に応じて設計されるオーダーメイド設備 が対象となります。単に既製品を導入するのではなく、自社環境に合わせた機械装置やシステム構築が求められる点が大きな特徴です。
補助金額と補助率(従業員数別一覧表)
補助金額は従業員数に応じて設定されており、大幅な賃上げを実施する場合には特例として上限額が引き上げられます。また、最低賃金引き上げに取り組む場合には補助率も引き上げられます。以下に分かりやすく表にまとめます。
補助上限額(通常時と特例時)
| 従業員数 | 補助上限額(通常) | 補助上限額(賃上げ特例適用時) |
|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 |
| 6~20人 | 1,500万円 | 2,000万円 |
| 21~50人 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| 51~100人 | 5,000万円 | 6,500万円 |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 |
補助率
- 中小企業:1/2(ただし特例適用時は2/3)
- 小規模企業者・再生事業者:2/3
- 上限1,500万円を超える部分は1/3が適用
特例措置によって、より大規模な投資や積極的な賃上げに取り組む事業者を手厚く支援する設計となっています。
補助対象経費の詳細
補助の対象となる経費は、以下の通り幅広く設定されています。
- 必須:機械装置・システム構築費
- その他対象:運搬費、技術導入費、知的財産権関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費
ただし、単なる既製品の購入やソフトウェアのバージョンアップのみといった事業は対象外です。自社の課題解決に直結し、省力化・生産性向上につながる投資であることが求められます。
補助対象要件の詳細
補助金の交付を受けるには、主に次のような要件を満たす必要があります(その他詳細は募集要項を確認下さい)
- 労働生産性の年平均成長率4%以上 を見込む事業計画であること
- 給与総額の年平均成長率2%以上 または 1人当たり給与総額が都道府県最低賃金の直近5年の成長率以上 であること
- 事業場内最低賃金を都道府県最低賃金+30円以上 に設定すること
- 従業員21名以上の事業者は「次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画」を公表すること
さらに、大幅賃上げ特例を適用する場合には、給与総額を 年平均6%以上増加 させ、かつ 最低賃金+50円以上 の水準を維持する必要があります。
補助事業のスケジュール

補助事業は、採択後すぐに始められるわけではなく、交付決定日から18か月以内に完了しなければなりません。また、採択発表日から数えると20か月以内が実施期間の上限です。スケジュールに余裕をもって計画を立てることが重要です。
申請受付開始は11月上旬、公募締切日は11月下旬の予定です。
申請方法
申請は完全オンラインで行われ、「jGrants」を通じて電子申請を行います。その際には GビズIDプライムアカウント が必須であり、取得には数週間かかる場合があるため、早めの準備が求められます。
申請書には、事業計画書、補助対象経費の根拠資料、各種確認書類などが必要です。不備がある場合は差し戻され、不採択となるリスクもあるため、細部まで注意して準備しましょう。
審査方法と審査のポイント
審査は大きく 書面審査と口頭審査(オンライン、対象者のみ) に分かれ、外部有識者が評価を行います。
評価のポイントは以下の通りです。
- 導入する設備の省力化効果の大きさ
- 投資による付加価値の増加可能性
- 革新性や独自性
- 計画の実現可能性と持続性
- 賃上げや最低賃金の引き上げに対する具体的な取り組み内容
さらに、事業承継計画やBCP(事業継続力強化計画)の認定などがある場合には 加点評価 の対象となります。
まとめ
「中小企業省力化投資補助事業(一般型)第4回公募」は、単なる設備導入補助金ではなく、生産性向上と賃上げを両立させることを目的とした制度 です。
- 従業員数に応じた上限額(最大1億円)
- 大幅賃上げや最低賃金引き上げを行う事業者への特例措置
- 広範な経費の補助対象
- 生産性向上と賃上げを必須とする厳格な要件
これらを踏まえると、単なる設備更新ではなく、中長期的な成長戦略に基づいた投資を計画している企業 にとって大きなチャンスとなります。
人手不足や賃上げ対応に悩む中小企業の経営者にとって、この補助金を活用することで、経営課題の解決に大きな一歩を踏み出すことができるでしょう。
申請を検討される場合は必ず募集要項をご確認の上、不明点は事務局等にご確認下さい。
募集要項:https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/application_guidelines_ippan_04.pdf


