株式会社リップスのIPOから読み解く「成長可能性」|中小企業が学ぶべき戦略とは

IPO

2025年6月、東京証券取引所グロース市場に新規上場(IPO)を果たした 株式会社リップスは、メンズビューティー市場という成長領域で独自のポジションを築き上げた企業です。その IPO は単なる資金調達ではなく、「ブランド形成と事業モデルの強化」という戦略的なステップとして注目されています。

本記事では、リップスのIPO に関する基本情報を整理するとともに、同社が公開した「成長可能性に関する説明資料」を丁寧に読み解きながら、会社概要・ビジネスモデル・優位性・成長戦略をわかりやすく解説します。中小企業診断士の視点から、「なぜこの会社は上場できたのか」「どのような戦略を描いているのか」という点を深掘りし、 中小企業経営者や支援者が自社の戦略構築に活かせる示唆をお届けします。

IPOで注目された株式会社リップスとは

株式会社リップスは、メンズビューティー市場に特化したブランド「LIPPS(リップス)」を展開する企業であり、2025年6月30日に東京証券取引所グロース市場へ新規上場(IPO)を果たしました。IPOのスケジュールは、仮条件の設定とブックビルディング、公開価格の決定、そして上場直後の公開取引開始まで順調に進み、注目を集めました。2025年6月の公開価格は3,130円で設定され、投資家や市場からの関心も高い案件となっています。

リップスは、長年にわたり若年層の男性を中心に支持されるヘアサロン事業を展開し、そのノウハウを活かしたコスメ商品事業を育成してきた点が特徴です。IPOによって資金調達の機会を創出し、さらなる成長投資を進めていくフェーズに入っています。

会社概要:リップスの基本情報

株式会社リップスは、2008年に設立された企業で、本社は東京都渋谷区にあります。「LIPPS hair」ブランドのヘアサロン事業を原点としてスタートし、その後にコスメ商品事業を拡大してきました。代表取締役は 的場隆光氏が務め、顧客ニーズの変化とトレンドを捉えたブランド戦略を推進しています。

リップスの事業構造は大きく二つに分かれています。一つは美容・ビューティー商品の企画・販売を行う商品事業、そしてもう一つはフランチャイズ方式でヘアサロンを展開する サロンフランチャイズ事業です。この両輪で収益基盤を構築し、ブランド力を高めています。

実際の売上高は2024年8月期に約37.6億円、営業利益は約7.2億円、純利益は約4.2億円と、黒字経営を維持しながら成長を続けています。従業員数は50名弱と、スリムな組織ながら高い収益性を実現しています。

ビジネスモデル:商品とサロンの両面展開

リップスのビジネスモデルは、サロン現場で得た顧客の「美意識・トレンド情報」を商品企画にフィードバックすることで、他社との差別化を図っている点が最大の特徴です。ヘアサロン「LIPPS hair」は、若い男性の美容意識が高い層を中心に年間約40万件の施術を提供しており、ここで得られるリアルなニーズが商品企画の強力な情報源となっています。

このような現場密着型のモデルにより、商品の企画から販売、さらにはサロンという顧客接点までを一気通貫で捉えることができ、ブランド体験の強化につながっています。また、商品販売はECやドラッグストア、小売店を通じて広く展開され、特にヘアワックスシリーズは全国約15,000店舗への配荷が進んでいます。

サロンフランチャイズ事業では「LIPPS hair」ブランドとして加盟店を支援する形で展開し、フランチャイズロイヤリティや技術指導、店舗運営支援による安定収益を確保しています。この仕組みはスケールしやすく、直営店を多く持つ必要がないため、リソースを商品開発とマーケティングに集中できる点が強みです。

企業の優位性:独自のブランド価値と市場ポジション

リップスの優位性は何と言っても「メンズ美容」に特化した明確なブランドポジショニングです。国内で男性向けコスメ市場が拡大する中で、商品力とブランド体験が結びついたモデルは他社との差別化要因になっています。富士経済の調査でもメンズコスメ市場は徐々に成長しており、特に中・高価格帯の商品においては顧客の支持が広がっています。

また、商品事業売上高は全体の約90%を占めており、ECおよび小売店での販売が収益を牽引しています。特にSNSマーケティングとブランド認知度の向上によって、若い顧客層へのリーチが強化されている点は、今後の成長の原動力として重要です。

成長戦略:市場拡大とブランド強化への取り組み

リップスは、IPO後の成長戦略として、まず既存市場での商品シェア拡大を掲げています。今後はスタイリング剤だけでなく、スキンケア・メイクアップ・フレグランスなどの周辺カテゴリへの展開を進め、ブランドのポートフォリオを拡充する計画です。また、商品開発では、サロン現場での顧客インサイトを活用した新たな商品投入を強化していきます。

もう一つの成長ドライバーは、サロンフランチャイズ事業の拡大です。既存のフランチャイズネットワークを強化するとともに、新規加盟店獲得を進めることで、ブランドのタッチポイントを社会全体で増やしていきます。さらに、海外市場展開についても視野に入れた中長期の戦略が示されています。

これらを実現するための資金調達がIPOによって可能となった点は、企業の成長ストーリーを語るうえで重要なポイントです。IPOを通じて調達した資金は、商品開発力の強化やマーケティング投資に充てられ、さらなる市場シェア獲得を狙います。

中小企業への示唆

リップスの事例から学べることは、「自社にしかない価値」を徹底的に磨き、顧客接点を強化することの重要性です。ヘアサロンというリアルな顧客体験を基点に商品開発を行い、それを全国レベルの流通チャネルへと展開している点は、中小企業が持つ「現場の知見」をビジネス価値に変換する好例です。

また、フランチャイズモデルを活用して事業をスケールさせる戦略は、資本制約がある中小企業にとっても参考になる点が多くあります。直営店にこだわらず、自社の強みを共有できるパートナーを増やすことで、リソースの最適化とブランドの浸透を図ることができます。

IPO企業の開示資料には、多くのヒントが詰まっています。特に「成長可能性に関する説明資料」は、投資家向けのストーリーを通して、その企業がどこに価値を見出し、どのように成長を描いているかを知るための重要なドキュメントです。中小企業の経営者・支援者にとっても、自社の戦略を考える際の優れた参考資料となるでしょう。

今後も内外のIPO事例を通じて、有益な経営・戦略の示唆をお届けしていきます。

株式会社リップス:https://lipps.co.jp/

株式会社リップス 「成長可能性に関する説明資料」:https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS83314/f142e7e4/91cd/4271/956e/c01b106ffaef/20250704131926507s.pdf

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