中小企業の設備投資支援策の中でも、長年にわたり中核的な役割を果たしてきたのが「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下、ものづくり補助金)」です。
2026年2月に公募が開始された第23次公募では、従来の枠組みを踏まえつつも、「生産性向上」と「賃上げ」をより強く意識した制度設計となっています。
本記事では、公募要領の内容に基づき、第23次公募の制度概要から申請実務上の注意点までを、初めて補助金を検討する方にも分かるよう丁寧に解説します。
事業目的
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の目的は、中小企業・小規模事業者が直面する制度変更や経営環境の変化に対応しながら、生産性向上を実現することにあります。
具体的には、複数年にわたる制度変更を見据え、革新的な新製品・新サービスの開発や、海外需要の開拓に取り組む中小企業等に対して、必要となる設備投資やシステム投資の一部を補助することで、経済全体の活性化につなげることを目的としています。
単なる設備更新ではなく、「将来の成長につながる事業であるか」が制度全体を貫く大きな考え方となっています。
事業内容
補助対象者
本補助金の対象となるのは、日本国内に本社および補助事業の実施場所を有する中小企業・小規模事業者等です。
株式会社や個人事業主だけでなく、一定要件を満たす組合、特定非営利活動法人、社会福祉法人も対象に含まれます。
重要なポイントとして、申請時点で常時使用する従業員が1名以上いることが必須要件となっています。従業員が0名の場合は申請できません。
補助対象事業の枠組み
第23次公募では、補助対象事業は大きく次の2つの枠に分かれています。
製品・サービス高付加価値化枠
この枠は、革新的な新製品・新サービスの開発を行う事業を対象としています。
ここでいう「革新的」とは、単なる既存製品の改良や生産効率の改善ではなく、顧客に新たな価値を提供する取り組みを指します。
したがって、「機械を入れ替えて生産性を上げるだけ」、「既存サービスをそのまま続ける」といった内容は、補助対象外となる点に注意が必要です。
グローバル枠
グローバル枠は、海外展開を通じて国内事業の生産性向上を図る事業を支援する枠です。
海外直接投資、輸出による市場開拓、インバウンド対応、海外企業との共同事業などが想定されています。
海外事業であっても、「国内拠点の生産性向上につながるか」が重要な評価軸となっています。
補助上限額・補助率
製品・サービス高付加価値化枠(従業員数別)
| 従業員数 | 補助上限額 |
|---|---|
| 1~5人 | 750万円 |
| 6~20人 | 1,000万円 |
| 21~50人 | 1,500万円 |
| 51人以上 | 2,500万円 |
補助率は、中小企業が1/2、小規模企業・小規模事業者および再生事業者は2/3です。
グローバル枠
グローバル枠の補助上限額は、従業員数にかかわらず3,000万円です。
補助率は、中小企業が1/2、小規模企業・小規模事業者が2/3となっています。
特例措置による支援の拡充
第23次公募では、賃上げに積極的に取り組む事業者向けの特例措置が用意されています。
大幅な賃上げに係る補助上限額引き上げ
一定水準以上の賃上げに取り組む場合、従業員規模に応じて補助上限額が引き上げられます。
最大で1,000万円の上乗せが可能(従業員数によって異なる)ですが、目標未達の場合には補助金返還義務が生じる点には十分な注意が必要です。
最低賃金引き上げに係る補助率引き上げ
所定の賃金水準に該当する事業者が最低賃金の引き上げに取り組む場合、補助率が2/3に引き上げられます。
こちらも適用には細かな要件があるため、事前確認が不可欠です。
補助事業のスケジュール

第23次公募のスケジュールは次のとおりです。
公募開始は2026年2月6日、申請締切は2026年5月8日17時となっています。
電子申請の受付は4月3日から開始されます。
採択結果は8月上旬頃に公表予定で、その後、交付申請を経て補助事業を実施します。
補助事業の実施期間は、枠により10か月または12か月と定められています。
補助対象の基本要件の詳細
本補助金では、事業終了後3~5年間の事業計画を策定し、以下の要件を満たすことが求められます。
最も重要なのは、付加価値額の年平均成長率3.0%以上を達成する計画であることです。
付加価値額は「営業利益+人件費+減価償却費」で算出されます。
さらに、1人あたり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、事業所内最低賃金を地域最低賃金より30円以上高い水準に保つことが求められます。
これらの要件は、未達の場合に補助金返還が求められるため、実現可能性を十分に検討した計画策定が不可欠です。
補助対象経費の詳細
補助対象経費は、事業の中核となる設備投資を中心に幅広く認められています。
代表的なものとして、
機械装置・システム構築費(必須)、
技術導入費、
専門家経費、
クラウドサービス利用費、
外注費、
知的財産権等関連経費
などが挙げられます。
ただし、事業の主たる部分を外注する内容や、資産運用的な性格の強い事業は補助対象外となります。
申請方法等
申請は電子申請のみで行われ、GビズIDプライムアカウントが必須です。アカウント発行には時間を要するため、早めの準備が重要です。
申請時には、事業計画書を中心とした各種書類を提出します。
事業計画書は審査の根幹となるため、「なぜこの投資が必要か」「どのように生産性向上につながるか」を論理的に説明することが求められます。
審査方法
審査は、外部有識者による書面審査、口頭審査により実施されます。
書面審査
提出された申請書類等に基づき、事務局にて形式要件の適格性確認を行います。また、外部有識者が経営力、事業性、実現可能性等の審査を行います。
提出書類に不備がある場合は、内容にかかわらず審査対象外となる点に注意が必要です。
口頭審査
提出された事業計画書を用いて、事業内容の適格性、経営力、事業性、実現可能性等の観点について、オンラインによる外部有識者との質疑応答が実施されます。
審査のポイント
審査では、事業の革新性、市場性、実現可能性、生産性向上への寄与、賃上げ計画の妥当性といった点が総合的に評価されます。
特に第23次公募では、「補助金ありき」ではなく、会社全体の事業計画と一体となった投資かどうかが強く問われます。
まとめ
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(第23次公募)は、高額な補助が期待できる一方で、計画未達時のリスクも明確な制度です。だからこそ、自社の中長期戦略と整合した形での活用が重要になります。
補助金はあくまで経営を前進させるための「手段」です。制度を正しく理解し、無理のない事業計画を描いたうえで、戦略的に活用していきましょう。
申請を検討される場合は、必ず募集要項をご確認の上、ご不明な点は事務局等にご確認下さい。

