近年、地震や水害といった自然災害に加え、感染症、サイバー攻撃、社会インフラの老朽化など、企業経営を取り巻くリスクはますます多様化・複雑化しています。特に中小企業にとっては、一度の災害やトラブルが事業継続そのものを揺るがしかねません。
こうした中で注目されているのが「BCP(事業継続計画)」です。BCPとは、災害や緊急事態が発生しても重要な事業を止めず、あるいは早期に再開するための計画を指します。しかし実際には、「必要性は分かっているが作れていない」という中小企業が多いのが現状です。
本記事では、東京商工会議所が提供するAIを活用したBCP策定支援システム「SONAE-AI(ソナエアイ)」について、その誕生背景や特徴、中小企業にとっての活用価値を分かりやすく解説します。
中小企業におけるBCP策定の現状と課題
まず、データから中小企業のBCP策定状況を見てみましょう。東京商工会議所が実施した「会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート」2025年調査結果によると、BCPを「策定済み」と回答した企業は全体の約4割にとどまっています。一方で、BCP・防災計画ともに未策定の企業は約3割存在しています。
大企業と中小企業で大きく異なるBCP策定率
この調査で特に重要なのは、企業規模による差です。大企業ではBCP策定率が6割を超えているのに対し、中小企業では3割未満にとどまっています。つまり、リスクに直面しやすい立場にある中小企業ほど、BCP策定が進んでいないという矛盾した状況が浮き彫りになっています。
「時間・人手・ノウハウ不足」が最大の壁
BCPを策定していない理由として最も多く挙げられたのが、「人員に余裕がない」「時間に余裕がない」という回答です。いずれも5割を超えており、中小企業の実情を如実に表しています。次いで、「具体的な対策方法が分からない」「費用に余裕がない」「具体的なリスクが分からない」といった声が続きます。
日々の経営や現場対応に追われる中で、BCP策定に十分な時間を割けない、専門的な知識を持つ人材がいないという悩みは、多くの中小企業に共通しています。
多くの企業が「リスクは感じている」現実
一方で、同調査では「備えが必要だと感じるリスク」についても尋ねています。その結果、地震を挙げた企業は9割を超え、水害、感染症、情報セキュリティといったリスクも高い割合で認識されていました。
つまり、多くの中小企業は「危ない」「備えなければならない」と感じているにもかかわらず、それをBCPという具体的な計画に落とし込めていないのです。この“意識と行動のギャップ”こそが、BCP策定が進まない最大の課題と言えるでしょう。
SONAE-AI(ソナエアイ)が生まれた背景
こうした課題を背景に誕生したのが、AIを活用したBCP策定支援システム「SONAE-AI」です。SONAE-AIは、東京商工会議所が中小企業支援の一環として提供しているサービスで、「BCP策定のハードルを下げる」ことを目的に開発されました。なお、東京商工会議所の会員限定のサービスであり、利用は無料です。
「一から考えなくていい」BCP策定支援
SONAE-AIの最大の特徴は、BCPを白紙の状態から考える必要がない点です。企業が自社の基本情報を入力したり、会社概要が分かる資料やURLをアップロードしたりすると、AIがその情報を解析し、BCPの下書きを自動で作成します。
これにより、「何を書けばいいか分からない」「最初の一歩が踏み出せない」という中小企業特有の悩みを大きく軽減することができます。
公的ガイドラインに準拠した安心設計
SONAE-AIは、東京商工会議所が公表している「オールハザード型BCP策定ガイド」や「超入門版BCPシート」に準拠して設計されています。そのため、内容の方向性に迷うことなく、一定水準を満たしたBCPを作成できる点も大きな魅力です。
企業の状況に応じて選べるBCP策定コース

SONAE-AIでは、企業の規模やBCPの成熟度に応じて、複数のコースが用意されています。例えば、初めてBCPに取り組む企業向けには、首都直下地震を想定した「超入門版」があります。まずは最低限の検討項目を整理し、災害時に「誰が何をするのか」を明確にすることが目的です。
さらに、地震だけでなく水害や感染症など、複数のリスクを想定した「オールハザード型」の簡易版・基本版も用意されています。段階的にBCPを充実させていける点は、中小企業にとって非常に現実的な設計と言えるでしょう。
AIアシスタントが支えるBCP策定プロセス
BCP策定の途中で悩みが生じることは少なくありません。「この項目には何を書けばよいのか」「自社の場合はどう考えるべきか」といった疑問が次々に浮かびます。
SONAE-AIには、こうした場面で相談できる「AIアシスタント機能」が搭載されています。AIが対話形式でヒントや考え方を示してくれるため、専門家が常にそばにいるような感覚でBCP策定を進めることができます。
東京商工会議所によるBCP支援との連携
東京商工会議所では、SONAE-AIの提供に加え、BCP策定に関するガイドラインの公開やセミナー、相談対応など、幅広い支援を行っています。公式サイトでは、BCPの基本的な考え方から実務的なポイントまで整理されており、SONAE-AIと併せて活用することで理解をより深めることができます。
特に近年は、地震だけでなく感染症や複合災害を想定した「オールハザード型BCP」の重要性が強調されています。リスクが多様化する時代において、単一シナリオに依存しない備えが求められているのです。https://www.tokyo-cci.or.jp/survey/bcp/
BCPは「作ること」ではなく「経営に活かすこと」が重要
中小企業診断士として多くの企業を見ていると、BCPが「作ったまま見直されていない」というケースも少なくありません。しかし、本来BCPは、事業内容や人員体制、取引先の変化に応じて更新していくものです。
SONAE-AIのように、編集や見直しがしやすい仕組みを活用すれば、BCPを単なる書類ではなく、実践的な経営ツールとして活かすことができます。
まとめ:AIを活用し、現実的なBCP策定の第一歩を
災害やリスクは、いつ発生するかを正確に予測することはできません。しかし、備えることは今すぐにでも始めることができます。人手や時間に制約のある中小企業にとって、AIを活用したBCP策定支援システム「SONAE-AI」は、その第一歩を後押しする有力な選択肢です。
BCP策定は、企業を守るだけでなく、取引先や従業員、地域社会からの信頼を高めることにもつながります。これを機に、AIの力を借りながら、自社に合ったBCPづくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。
「SONAE-AI(ソナエアイ)」:https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1208216


