中小企業診断士の視点から、今回は東京都が支援する注目の奨励金をご紹介します。
「手取り時間創出・魅力ある職場づくり推進奨励金」は、生産性向上・離職率低下・働きがいのある職場環境づくりに挑む中小企業を最大230万円支援する制度です。
柔軟な働き方・ライフステージの支援・エンゲージメント向上・賃金引き上げなど、多角的な取組が対象になります。
1. 奨励金実施の背景:「手取り時間」とは?
現代の労働環境において、従業員のワークライフバランスと働きがいの向上は急務です。
東京都は、「手取り時間」の創出を通じて、企業の魅力と生産性の同時向上を目指しています。
手取り時間とは?
育児・介護・趣味など、自分らしい時間を持てる「可処分時間」のこと。単なる時短ではなく、柔軟で多様な働き方を通じて実現します。
この奨励金は、制度整備と従業員支援により、企業の魅力とエンゲージメント向上を後押しする東京都の重点施策です。
2. 奨励金の概要:誰が対象?いくらもらえる?
対象事業者
- 都内に事業所を有する中小企業等(従業員300人以下)
- 雇用保険適用事業所が都内にあり、常時雇用労働者が1名以上
- 労働基準法や各種法令に適合していること
- 就業規則を作成・届出済みであること
支給額
最大230万円
※以下の4つのカテゴリーから2つ以上の取組を選択・実施することが必要です。
区分 | 取組例 | 上限額 |
---|---|---|
手取り時間創出 | フレックス・週休3日制・勤務間インターバル等(4項目) | 各10万円(最大40万円) |
ライフステージ支援 | 慣らし保育、小1の壁対策、家庭応援休暇(3項目) | 各10万円(最大30万円) |
エンゲージメント向上 | キャリア面談制度、副業容認、表彰制度(7項目) | 各10万円(最大40万円) |
賃金引上げ | 時間当たり60円以上アップ(最大10人) | 一人あたり12万円(最大120万円) |
※2つ以上のカテゴリーを組み合わせる必要があります。
3. 申請の流れとスケジュール:10回のチャンスあり
この奨励金は、年10回のエントリー期間があります。各回140社が予定されており、事前エントリー制です。
主な流れ:
- 【Web】事前エントリー(Grafferアカウント使用)
- 【Web+郵送】企業情報の登録・要件審査
- 【Web】専門家派遣希望日程の登録
- 【対面】専門家との相談(2回)
- 【Web】取組目標の設定・対象事業登録
- 【実施】奨励金対象事業の実行
- 【Web/郵送】報告書提出・支給申請
- 【郵送】口座振替依頼書提出
- 【振込】奨励金支給
4. 専門家派遣で伴走支援:制度づくりに自信がなくても安心
専門家は企業に2回派遣され、下記を中心に支援を行います:
- 制度導入に向けた実行計画の確認
- 社内制度の整備に関する助言
- 奨励金対象事業の設定と実現可能性のチェック
- 実施報告書作成のアドバイス
※専門家は奨励金の申請代行や書類作成を行うわけではありません。
企業が主体的に制度構築を進めることが基本です。
5. 支給対象となる15の取組内容とは?
奨励金の対象となる事業は、以下の15項目に整理されています。複数選択することで支給額が上がります。
「手取り時間」創出(最大40万円)
- フレックスタイム制
- 週休3日制、勤務間インターバル
- 短時間正社員制度、勤務地限定など
- 積立休暇制度
ライフステージ支援(最大30万円)
- 家庭応援特別休暇(セレモニー休暇等)
- 育児・介護休業中の支援制度
- 小1の壁を超える制度、慣らし保育制度
エンゲージメント向上(最大40万円)
- 副業・兼業容認制度
- キャリア形成支援制度
- メンター制度、キャリアコンサル支援
- 表彰制度、つながり支援制度
- DE&I対応制度(育業支援など)
賃金引上げ(最大120万円)
- 時間当たり60円以上アップ
- 最大10人まで支給(12万円/人)
6. 実際の支給事例:どう活用されている?
過去の「魅力ある職場づくり奨励金」事例をベースにすると、以下のような活用が見られました:
事例A:IT業(従業員30名)
- 短時間正社員制度を導入
- キャリア面談制度を新設
- 副業を可能とする就業規則改定
- → 3取組で最大額90万円を支給
事例B:福祉業(従業員60名)
- 育児休業者へのフォロー制度導入
- 賃上げ制度を全従業員に適用
- → 離職率が20%改善、120万円の支給
※令和7年度版では、さらに「DE&I」など時流に即した項目も新設されています。
7. 申請時の注意点:特に重要な5つのポイント
以下は支給対象外とならないために、特に気をつけるべき点です:
- 事前エントリーから順番通り進むこと(順序違反は失格)
- 事業開始は登録後から。開始前の取組は対象外
- 提出書類に不備があると不採択の可能性大
- 過去の類似奨励金と内容が重複していないか要チェック
- 就業規則は最新の法改正に対応して届出済であること
書類の差し替えや再提出は原則できません。計画的な準備が必須です。
8. 問い合わせ先・申請方法
【申請方法】
すべての手続きは「Graffer(グラファー)」というデジタル行政プラットフォームで行います。
【問い合わせ先】
公益財団法人 東京しごと財団 企業支援部 雇用環境整備課 事業推進係
手取り時間創出・魅力ある職場づくり推進奨励金事務局
URL:https://www.tokyo-engagement.jp
電話:03-5211-2600(平日 9:00〜17:00)
終わりに|中小企業こそ「働きがい改革」に投資すべき
この奨励金は、資金支援だけでなく、企業のブランディング・採用強化・定着率向上にも大きく寄与します。
東京都が本気で後押しする本制度を活かし、御社の「働き方改革」の一歩を踏み出してみませんか?
申請を検討される場合は、必ず募集要項を確認の上、ご不明点は事務局はご確認下さい。