【2025年版】ディープテック・スタートアップ支援基金/GX支援事業を徹底解説

政策

はじめに

2025年、ディープテック分野のスタートアップに向けた国の支援制度がさらに拡充されています。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する「ディープテック・スタートアップ支援基金(DTSU事業)」および「GX分野のディープテック・スタートアップ支援事業(GX事業)」は、長期的な研究開発が必要で、市場化に至るまでに高いハードルを持つスタートアップに対して、資金的・制度的なバックアップを提供するものです。

本記事では、中小企業診断士としての視点から、この支援制度の背景、概要、申請条件、審査方法、そして採択されるための要点について、わかりやすく丁寧に解説していきます。

DTSU事業・GX事業とも、公募は通年で実施し、年4回程度、提案受付期間を設定し、その都度、審査を実施する予定です。提案受付期間等は、本公募ページに掲載する「ディープテック・スタートアップ支援事業 公募に係る日程一覧」において定めます。

なお、今回の提案受付期間は2025年7月9日10時~2025年7月16日正午となっています。


支援制度の背景と狙い

日本では近年、「スタートアップ育成5か年計画」に基づき、ユニコーン企業を100社創出するという国家目標が掲げられています。とりわけディープテックと呼ばれる技術志向型スタートアップは、革新性が高い一方で、その技術の確立と社会実装には長い時間と大きな資金を要します。投資回収までの時間が長くなるため、民間投資家の資金が届きにくいという課題を抱えてきました。

そのような背景から、この助成制度は「技術で勝ってビジネスで負ける」ことのないように、革新的な技術を持つ企業の育成と、資金調達のギャップを埋めることを目的として設計されています。GX事業に関しては、カーボンニュートラルの実現を視野に入れ、CO₂排出削減と経済成長を両立させる技術を持つスタートアップを重点的に支援する構造になっています。


支援の枠組みとフェーズ構成

この制度は、スタートアップの成長段階に応じて三つのフェーズに分かれて支援されます。最初の段階である「STSフェーズ」では、まだ技術シーズを持っている段階で、試作品やプロトタイプの開発、マーケティング活動などが主な活動内容となります。続く「PCAフェーズ」では、すでに技術が一定程度実用化に近づいており、初期市場への投入を見据えた応用開発やビジネスモデル構築が進められます。そして最終段階である「DMPフェーズ」では、量産体制の構築や、実際の生産設備の設計・導入、販売体制の強化などが支援対象となります。

それぞれのフェーズで、助成金の上限や助成率、必要な要件が異なりますが、最大で6年間・総額30億円までの助成を受けることが可能です。各フェーズは最長で4年、実施期間の目安としては1.5年から2年とされており、事業の進捗状況に応じて「ステージゲート審査」を経て、次のフェーズへの進展や期間延長が判断されます。


応募に必要な基本条件

本制度に応募するにあたり、全てのフェーズで共通して満たすべき基本的な要件があります。まず、申請者は日本国内に法人登記されている未上場企業であることが必要です。事業の主たる研究開発拠点および経営の意思決定拠点も日本国内に設置している必要があります。

さらに、研究開発に積極的に取り組んでいる企業であることが求められており、直近の売上高に占める研究開発費の割合が5%以上であることが条件です。企業の設立年数も問われており、原則としてSTSおよびPCAフェーズでは設立から10年以内、DMPフェーズでは15年以内の企業が対象となります。

加えて、中小企業基本法における資本金や従業員数の基準を満たす中小企業であり、「みなし大企業」に該当しないことも求められます。みなし大企業とは、大企業の子会社や出資比率の高い関連会社などを指し、一定の独立性が確保されていることが要件となっています。


フェーズごとの応募要件の違い

STSフェーズでは、ベンチャーキャピタル(VC)やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)からの出資が1/3以上あることが必須です。しかもその中でも、最も大きな出資割合を占めるのがVCかCVCでなければならないという厳格な要件があります。これは、この段階では資金調達力そのものが将来性の裏付けと見なされていることを意味します。

PCAフェーズでは、出資に加えて融資も支援対象となりますが、融資単独では認められず、VCや事業会社などからの出資とセットでなければなりません。また、VCやCVCが株主に含まれているか、あるいは採択後に加わる予定であることが要件です。

DMPフェーズになると、出資や融資は必須条件ではありませんが、VCなどからの支援を受けている場合は審査の加点対象となります。実用化・量産化に向けて、連携先との覚書(MOU)の提出が必須となり、そこで量産化の目的や内容、実施体制、パートナー企業との関係などが明確に示されている必要があります。


審査方法と評価の視点

本制度の審査は、NEDOと外部有識者によって構成される評価チームが書面審査と必要に応じてヒアリング審査を実施します。審査では、技術の独自性と革新性、対象とする市場の社会的意義、事業計画の実現可能性、収益性などが評価されます。

特に重要なのが、VC等からの出資状況と、その出資がどのように事業計画と連動しているかです。つまり、資金があるだけではなく、それが明確なマイルストーンや成長戦略に紐づいているかどうかが見られます。

また、GX事業の場合には、CO₂削減などの社会的インパクトの定量的根拠も重視されます。CO₂排出量の削減効果を定量的に推計し、研究開発の成果がどのように環境負荷低減に寄与するかを明示する必要があります。


ステージゲート審査とその意味

この助成制度の大きな特徴として、「ステージゲート審査」という仕組みがあります。これは、支援期間中にあらかじめ設定されたタイミングで中間評価を行い、その評価結果に応じて、次のフェーズへの移行や継続、場合によっては中止が決定されるというものです。

評価されるのは、これまでの研究成果や事業計画の進捗、外部資金の調達状況、次期の研究計画の実現性など多岐にわたります。つまり、計画だけでなく、実行力やその成果が問われる仕組みです。


採択を勝ち取るためのポイント

採択に向けて最も重要なのは、単なる技術紹介ではなく、社会に対する影響力を含めた明確なストーリーがあるかどうかです。そのためには、事業計画書の中で以下のような点を丁寧に言語化することが必要です。

・技術の強みと差別化要素
・対象市場と顧客の課題
・どのような価値を提供するか
・それをどのように実現するかの体制とスケジュール
・必要な資金とその用途、次の資金調達計画

さらに、出資者との関係も重要な要素です。VCやCVCからの支援が単なる資金提供にとどまらず、経営やネットワーク支援を含む「ハンズオン」であることを明示することで、NEDOの審査においても高評価が得られる可能性が高まります。


おわりに

ディープテック・スタートアップ支援基金およびGX事業は、我が国が本気でイノベーションを起こそうとしている証です。これは単なる助成金ではなく、スタートアップの成長を中長期にわたり支える戦略的な国家プロジェクトとも言えます。

制度の目的と趣旨を理解し、自社の強みを最大限に活かした事業計画を構築していただきたいと願っています。

申請を検討される際は以下の応募要項を必ずご確認の上、ご不明な点は事務局へお問い合わせ下さい。https://www.nedo.go.jp/content/800026537.pdf

また、以下の通り、公募説明会、事前相談を実施しております。

(1)公募説明会

開催日時間実施方法申込ページ
2025年6月13日(金)14時~15時
(13時30分から待機可能)
Microsoft Teams受付はこちら

(2)事前相談について(事前相談期間:2025年7月8日(火)まで)

DTSU事業・GX事業への今回のご応募に関するご不明点等について、DTSU事務局が事前の相談に対応https://www.nedo.go.jp/koubo/CA2_100497.html

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