中小企業のメンタルヘルス対策に追い風!「心の健康投資」支援事業で人的資本経営を加速

政策

働き方改革や人的資本経営の推進が求められる中、企業にとって「心の健康」はもはや“従業員個人の問題”ではなく、“組織全体のパフォーマンス”に直結する重要な経営課題となっています。とりわけ中小企業では、限られた人員と資源の中で、従業員のコンディションが事業の成否を左右することも少なくありません。

本記事では、2025年度に開始された経済産業省の新たな補助金事業「企業の『心の健康投資』を支えるサービス導入促進事業」について、その目的から申請方法、補助金の中身までをわかりやすく解説します。


心の健康投資の必要性と背景〜統計データが示す現状と課題

「心の健康投資」とは、企業が従業員のメンタルヘルス向上に向けて戦略的に行う取り組みのことで、健康経営の枠を超えて人的資本経営の中核とされています。

しかし、実際の中小企業の対応状況を見ると、まだまだ道半ばであることがわかります。

厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、2023年時点でメンタルヘルス対策全般に取り組んでいる中小企業の割合はわずか41.4%。さらに「ストレスチェックの実施」以外の具体的な取組(職場復帰支援や相談体制の整備、職場環境改善など)に至っては20〜30%台にとどまっています。

また、メンタルヘルス対策に取り組んでいない理由として多く挙げられているのは以下のような点です:

  • 必要性を感じない(19.4%)
  • 取り組み方がわからない(29.4%)
  • 経費がかかりすぎる(40.7%)

(出典:厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査」)

これらの実態が示す通り、取り組む意志はあっても「予算不足」「ノウハウ不足」「効果が見えない」などの理由から足踏みしている企業が多いのが現状です。

このような背景を踏まえて創設されたのが、本稿で紹介する補助事業です。


補助事業の概要と申請対象

本事業は、先端技術を活用したデジタルメンタルヘルスサービスを中小企業が導入する際、そのサービス利用料の一部を補助するものです。

対象者は以下の条件を満たす法人・個人事業主です:

  • 日本国内で法人登記をしていること
  • 国内で事業を営んでいること
  • 採択済みサービスから導入するものを選ぶこと
  • 申請人数の少なくとも半数以上が実際にサービスを利用すること
  • 利用実績や効果に関するデータ提供に同意できること

補助の対象経費と支援内容

補助の対象は「サービス利用料」のみです。

内容詳細
補助率対象経費の1/2以内
補助上限額300万円/1件
消費税原則補助対象外(免税事業者を除く)

特定のサービス提供者に偏りが生じないよう、第3希望まで複数のサービスを申請できる仕組みも整備されています。


審査の方法と採択基準

申請書類の審査は、以下の4つの観点から総合的に判断されます。

  1. 参加の動機
    • 自社が抱える課題と応募理由が具体的に説明されているか
    • 既存の取り組みとの関連性が示されているか
  2. 事業計画
    • スケジュールの現実性や、従業員への周知方法の工夫
    • 継続的な利用を促す仕組みの有無
  3. 実施体制
    • 経営層・部門責任者・産業保健スタッフ等の協力体制が整っているか
  4. 継続性・発展性
    • 補助期間終了後も取り組みを継続する意向や計画があるか

採択にあたっては、必ずしも全項目を満たしている必要はありませんが、「本事業の目的を自社課題に即して理解しているか」が重視されます。


提供されるデジタルメンタルヘルスサービス一覧

申請時には、以下の中から導入を希望するサービスを選択します。サービスはカテゴリ別に整理されており、心理療法・AI分析・チャットサポート・バーチャル空間など多様な技術が活用されています。

企業名サービス名
Upmind株式会社Upmind WELLNESS PROGRAM
emol株式会社emol for employee
ファストドクター株式会社デジタルメンタルヘルス包括支援サービス
株式会社フィスメックAIくんと学ぶストレスマネジメント「SMARTくん」
Boost Health株式会社BOOST社員ケア代行
株式会社MentaRestメタバースでメンタルを整えるMentaRest
ロゴスサイエンス株式会社ストレス抵抗力向上プログラム
株式会社トータルブレインケアCogEvo M
株式会社ラフールAIマネージャー支援プログラム
株式会社アドバンテッジリスクマネジメントアドバンテッジカウンセリング WEBパッケージ(中小企業向け)

導入時には、企業の課題やニーズに合わせたマッチングが重要です。単に「手頃」なものではなく、「課題解決につながる」サービスを選びましょう。


実施スケジュールと申請方法

  • 公募期間:2025年6月10日(火)~7月17日(木)正午まで
  • 採択結果通知:7月下旬~8月上旬
  • サービス利用期間:2025年8月下旬~2026年1月30日(金)
  • 実績報告期限:2026年2月27日(金)
  • 補助金支払:2026年3月末予定

【提出書類】

  • 様式1:公募申請書
  • 様式2:エントリーシート
  • 様式3:暴力団排除に関する誓約書
  • 法人事業概況説明書、直近2期の財務諸表、会社概要など

【提出方法】


中小企業が取り組むべき人的資本経営の第一歩として

「心の健康」は、企業が抱える人と組織の課題を可視化し、改善に向けて動き出すための“バロメーター”とも言えます。特に中小企業では、従業員一人ひとりのエンゲージメントが売上・生産性に直結するため、メンタルヘルス対策を経営戦略に組み込む意義は極めて大きいものです。

本補助事業は、「補助金をもらえる」という金銭的な魅力だけでなく、「先進的なメンタルヘルス手法に触れる機会」「人的資本経営の実践の入り口」としても価値の高い施策です。

ぜひこの機会に、貴社の「心の健康投資」を本格的にスタートさせてみませんか?

申請を検討される際には、募集要項を確認の上、ご不明な点は事務局へお問い合わせください。https://www.seedplanning.co.jp/-/2025/mhs/format2/setumeikai_jimukyoku.pdf

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