2025年6月30日に発表された「事業再構築補助金 第13回公募」の採択結果について、応募件数や採択件数の内訳、補助金額の傾向、採択された事業の特徴まで詳しく解説します。中小企業の経営支援をしている方、今後補助金申請を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
応募件数・採択件数の全体概要
第13回公募では、合計3,100件の応募がありました。そのうち1,101件が採択され、全体の採択率は約35.5%となりました。
これは過去の採択率と比べてもやや低めで、採択競争がさらに激化していることがわかります。
事業類型ごとの応募・採択件数は以下の通りです:
事業類型 | 応募件数 | 採択件数 | 採択率 |
---|---|---|---|
成長分野進出枠 通常類型 | 2,290件 | 739件 | 約32.3% |
成長分野進出枠 GX進出類型 | 489件 | 244件 | 約49.9% |
コロナ回復加速化枠 | 321件 | 118件 | 約36.7% |
「成長分野進出枠、GX進出類型」が他の枠に比べて高い採択率となっており、脱炭素社会を後押しする政策色がうかがえます。
応募・採択件数の内訳【業種別】
応募者・採択者ともに多かった業種は以下の通りです:
応募件数が多かった業種TOP3
- 製造業(22.9%)
- 卸売業・小売業(14.9%)
- 建設業(13.4%)
採択件数が多かった業種TOP3
- 製造業(33.8%)
- 卸売業・小売業(14.4%)
- 建設業(14.2%)
やはり「製造業」の存在感が大きく、中小製造業の成長投資を積極的に支援する傾向があることがわかります。一方で、宿泊・飲食、情報通信業、学術研究なども一定数採択されています。
補助金申請額の分布と傾向
今回の応募額の分布を見てみると、最も多かったのは1,500万〜3,000万円未満のゾーンで、全体の約40.1%を占めています。
さらに、3,000万円未満で全体の約79%を占めており、中小規模の投資が中心となっていることが読み取れます。
採択者の分布もほぼ同様で、3,000万円未満の補助金申請が全体の72.4%。つまり、過度な大型投資よりも、実現可能性と収益性がある中規模の投資計画が評価されやすい傾向が見えます。
採択された事業の特徴・トレンド

第13回では、下記のような傾向が目立ちました。
GX(グリーントランスフォーメーション)と脱炭素が中心テーマに
国の政策でも重点が置かれている「GX」。第13回の採択結果を見ると、多くの企業が脱炭素社会への貢献をテーマに掲げており、特に製造業を中心にGX分野への進出が目立ちます。
代表的なGX採択事例:
- 愛知県・イセ工業株式会社:CO₂削減に貢献するGX分野への進出。高性能レーザ導入で生産性と環境負荷の両面を改善。
- 熊本県・合資会社ミヤムラ貝印石油:ガソリンスタンドの強みを生かしEV市場に参入し脱炭素事業を展開。
- 兵庫県・株式会社マエダマーキン:ゼロエミッション船向け部品の製造という船舶の脱炭素ニーズに対応。
考察:
GX分野の採択には、「実現可能な技術的裏付け」と「社会的インパクト」が評価の鍵です。補助金を受けることで、高額な設備投資が可能になり、成長分野への参入障壁を突破しています。
DX・IT活用による業態転換が急増
デジタル化を武器に、新規市場にチャレンジする事業者が増加。特に「業務効率化」「オンライン化」「AI導入」などがキーワードとして浮かび上がります。
DX系採択事例:
- 東京都・株式会社ビースポーク:AI動画メンターによる新人社員支援システムを開発。
- 東京都・株式会社ニッチカンパニー:オンライン占いマッチングでメンタルヘルス不調防止という新視点のDX。
- 静岡県・株式会社ナナクレマ:AIジョブマッチングによる就活支援カフェからの業態転換。
考察:
補助金の審査では、「業種を問わずITやAIを活用した革新性」が高く評価されており、特にサービス業や教育・人材関連業において新しいデジタルサービスが続々と誕生しています。
次世代自動車・半導体関連が好評価
脱炭素・電動化の潮流を受け、EV(電気自動車)関連や半導体製造装置向け部品製造といった成長分野に挑戦する案件が多数採択されました。
EV・半導体関連事例:
- 愛知県・鴨田精機:EV向け電動コンプレッサー部品製造ラインの構築。
- 熊本県・丸山ステンレス工業:EV製造設備の部品製造に特化した事業再構築。
- 神奈川県・株式会社エーアイ・テクニカル:データセンター向け精密金属加工部品でITインフラを支える。
考察:
これらの企業に共通するのは「既存技術の強みを活かしつつ、新分野に特化したラインを整備」するアプローチ。新市場への適応力とニッチ分野への展開力が成功のカギといえます。
地域資源の活用と観光・インバウンド復活
コロナ後の観光需要回復を見据えた宿泊・飲食業の新規展開が数多く採択されました。地域の文化・食・自然などをテーマに、体験型の観光サービスが増えています。
地域密着型観光サービス事例:
- 徳島県・めいえん:「にし阿波の魅力」発信をテーマにした体験型宿泊施設の開業。
- 東京都・株式会社STARANISE:ペット連れインバウンド顧客向け和風宿泊施設を都心近郊に展開。
考察:
観光系事業は「地域資源のストーリー性」や「体験価値の高さ」が評価の決め手。インバウンド需要を視野に入れた多言語対応や文化体験型のサービスが今後も伸びていくと見られます。
まとめと今後の示唆
第13回公募では、従来型の事業転換にとどまらず、「GX」「DX」「観光」「EV・半導体」など、社会課題と成長市場に対する戦略的アプローチが目立ちました。
今後、事業再構築補助金の申請を検討されている方は、以下の点に注目すると良いでしょう:
- 時流を反映した事業テーマを設定する
- 既存事業とのシナジーを意識する
- 「補助金がなければできない」ではなく「補助金でより加速できる」計画にする
- 支援機関との連携で審査通過率を向上させる
本記事が皆様の事業構想におけるヒントとなれば幸いです。