企業の人材戦略において「育業(育児休業)期間中のスキルアップ支援」は、今や重要な経営テーマとなっています。育業中に自己研鑽の機会を提供することは、従業員のキャリア形成を支援し、職場復帰後の即戦力化にも繋がります。
そのような中、東京都が実施する「令和7年度 育業中スキルアップ助成金」は、育業中の従業員が自主的に受講する研修費用を助成する制度として注目を集めています。
この記事では、制度の概要から対象者、助成金額、申請手続きに至るまで、わかりやすくご紹介します。
令和7年度 育業中スキルアップ助成金https://www.koyokankyo.shigotozaidan.or.jp/jigyo/skillup/boshu/skill-R7ikugyo.html
育業中スキルアップ助成金とは?目的と背景
本制度の目的は、都内企業が雇用する従業員が、育業(育児休業)期間中に希望してスキルアップ研修を受講する際、その費用の一部を企業に対して助成することです。
「育業中に研修なんて受けられるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、育児と両立しながら自分の学びを継続したいという声は年々増えています。この制度は、そうした前向きな個人の意欲と、それを支援する企業の姿勢を後押しするものなのです。
助成対象となる企業と要件
本制度の対象となるのは、東京都内で事業を営む以下の企業・事業者です。
- 中小企業等
資本金や従業員数が一定以下の企業や個人事業主が該当します。具体的には以下の通りです。
業種 | 資本金・出資額の上限 | 従業員数の上限 |
---|---|---|
小売業・飲食業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | ー | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | ー |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
- 大企業
上記の中小企業基準に該当しない企業も申請可能です。ただし、「みなし大企業」は除外されます(親会社等との関係によっては中小企業扱いとされない場合)。
申請時から実績報告に至るまで、東京都内で継続的に事業を営んでいる必要があります。
助成の対象となる研修とは
助成対象となるのは、以下のすべての条件を満たす研修です。
- 教育機関が計画した公開研修
不特定多数を対象とし、Web等で受講者を募っている研修。社内限定や個別指導は対象外です。 - 集合研修、eラーニング、双方向型オンライン研修
所定の時間に一斉に受講する形式が対象。自己ペースで学ぶeラーニングも対象に含まれます。 - 受講者が希望して、育業期間中に受講すること
会社命令ではなく、あくまで本人が希望して受講する研修でなければなりません。 - 研修費用が受講者1人・1研修ごとに明確化されていること
- 助成対象経費の2分の1以上を企業が負担していること
- 国・自治体の他の助成制度との重複不可
研修の選定にあたっては、受講案内や費用の明示、学習内容の確認が重要になります。
助成対象となる経費
助成金の対象となる費用は、以下の経費のうち企業が実際に負担した金額です。
- 研修受講料
- 教材・テキスト代
- 研修に付随する登録料や管理料
- 託児サービス利用料(研修時間中の保育にかかる費用)
一方で、以下のような費用は助成対象外です。
- パソコンや機材などの購入費用
- 通信料・インターネット利用料
- 食費・交通費・宿泊費
- 消費税
- ポイント利用分
助成対象経費は、すべて証拠書類の提出が必要です。たとえば振込記録や領収書などが該当します。
助成金額と助成率|企業規模に応じた支援

育業中スキルアップ助成金では、企業の規模によって助成率が異なります。
- 中小企業等:助成対象経費の3分の2を助成
- 大企業:助成対象経費の2分の1を助成
そして、1申請企業あたりの年間上限額は100万円です。この上限額に達するまでであれば、複数回の申請も可能です。
例えば、従業員が5万円の研修を受講し、企業がその費用の3万円を負担した場合、中小企業であればその3万円の3分の2=2万円が助成対象となります。
助成スケジュールと対象期間
制度のスケジュールは以下の通りです。
- 交付申請期間:令和7年3月1日〜令和8年2月28日
- 対象となる研修実施期間:令和7年4月1日〜令和8年8月31日
- 交付申請締切:研修開始の1か月前まで
- 実績報告期限:研修終了後2か月以内
準備には余裕を持つことが推奨されます。とくに電子申請には「GビズID」が必要となるため、事前取得を忘れずに。
申請方法と手続きの流れ
申請方法は2つの形式があります。
- 紙申請
郵送により提出します。書類送付の際には「申請書類在中」と封筒に明記が必要です。 - 電子申請(Jグランツ)
GビズIDを使用して申請できます。Jグランツ上で手続きが完結するので、紙提出よりもスムーズです。
【申請から助成金入金までの流れ】
- 交付申請書提出(研修開始の1か月前まで)
- 交付決定通知
- 研修実施
- 実績報告書提出(研修終了後2か月以内)
- 助成額の確定通知
- 請求書兼口座振替依頼書提出
- 助成金の振込(提出後1か月程度)
審査方法と注意点
審査は提出書類をもとに厳正に行われます。特に、以下の点に注意が必要です。
- 不備や記載漏れがあると再提出となる
- 交付要件を満たさないと助成金額が減額される
- 期日までに提出がない場合、助成は無効となる可能性あり
また、助成金の交付後でも、虚偽申請が発覚した場合には返還義務が生じることがあります。
まとめ|育業中の学びを支援する画期的な制度
「令和7年度 育業中スキルアップ助成金」は、働きながら子育てをする従業員のキャリア支援と、企業の人材育成を同時に推進できる貴重な制度です。
これまで育業中の学習機会は自己負担が前提でしたが、本制度により企業側の費用負担が軽減され、積極的に従業員の成長を後押しできるようになります。
育業中の学びは、復帰後のパフォーマンスや離職防止にも大きく貢献します。中小企業経営者の皆様、ぜひこの制度を活用し、働きやすい環境づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。
申請を検討される場合は必ず募集要項をご確認の上、ご不明な点は事務局等にご確認下さい。