中小企業に広がるインバウンド需要の影響とは?最新調査から見る現状と課題

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2025年9月、日本政策金融公庫の総合研究所から発表された「中小企業の経営にインバウンドが与える影響に関する調査」結果では、インバウンド(訪日外国人観光客)が中小企業の経営にどのような影響を与えているのかが詳細に分析されました。

本記事では、調査の結果を分かりやすく整理しつつ、実際の経営者から寄せられた「生の声」を交えながら、中小企業にとってのインバウンド需要の現状と課題を解説します。さらに、東京商工会議所が主催するセミナーについてもご紹介します。


インバウンドが業績に与える影響は限定的だが、一部業種で大きな効果

調査によると、「インバウンドが業況にプラスの影響を与えている」と答えた小企業は6.1%、中小企業は12.8%にとどまります。一方、「影響はない」と回答した割合は、小企業で86.5%、中小企業で82.5%と大多数を占めました。

つまり、多くの企業にとってインバウンド需要は直接的な売上拡大にはつながっていないのです。ただし、飲食店・宿泊業や小売業、運輸業など一部業種では恩恵が顕著で、北海道や近畿など観光資源が豊富な地域では「プラス効果が大きい」とする企業が2割を超えました。

例えば、ある飲食店の経営者は「翻訳アプリを使って注文するお客様が増え、外国人客の対応が以前よりスムーズになった」と語っています。こうした事例は、デジタル技術の活用がインバウンド対応を支えていることを示しています。


売上に占めるインバウンド比率 ― 多くはゼロ、一部で高い依存度

小企業では79.0%が「インバウンド売上ゼロ」と回答しましたが、21.0%は何らかの売上があると答えています。その中でも「25%以上」と答えた企業は0.9%存在し、観光関連業種では一定の依存度が見られます。

中小企業でも73.2%がゼロと回答しましたが、北海道では42.8%が「売上あり」と答えており、地域による違いが際立ちます。

ある建築材料卸売業者は「インバウンド需要で店舗改装が増え、間接的に売上増加につながった」とコメントしており、直接的な観光消費だけでなく、波及効果も見逃せません。


取り組み状況 ― 積極的に進める企業は少数派

調査では、小企業で「インバウンド対応を実施している」と答えたのは5.4%にすぎません。中小企業でも8.0%と同様に低水準でした。

具体的な取り組みとしては、

  • キャッシュレス決済導入(30%台)
  • 外国語メニュー・案内整備(35%前後)
  • SNS活用による情報発信(約30%)

が多く挙げられています。

北海道のダイニングバーでは「英語メニューを用意し、日本ならではの料理を揃えた」、近畿の宝飾品卸では「英語対応パート採用とSNS活用でリピーターを獲得」といった具体的な工夫が成果につながっています。


取り組みを阻む壁 ― 必要性の認識不足とリソース制約

一方で、取り組まない理由のトップは「事業内容や立地にそぐわず、必要性がない」で71.7%に達します。しかし実際には、次のような課題感も浮かびます。

  • 「キャッシュレス決済を導入したいが手数料が重く導入できない」(近畿・飲食店)
  • 「外国人スタッフを雇用したいが知識不足で断念」(北関東・飲食店)
  • 「何から始めてよいか分からない」(近畿・洋菓子製造業)

ノウハウ不足、人材不足、資金不足が大きな障壁となっているのです。


インバウンド対応を学ぶ ― 東京商工会議所セミナー

こうした状況を踏まえ、東京商工会議所ではインバウンド対応をテーマとした実践的なセミナーを開催します。

👉 「インバウンド需要を取り込むための実践セミナー」

  • 開催日:2025年10月21日(火)14:00~16:00
  • 会場:東京商工会議所 Hall&Conference(千代田区)RoomA3・4・5 
  • 主な内容
    • 【第一部】セミナー(約45分)
      演題:「企業の経営力強化に向けて〜拡大するインバウンド需要にみるビジネスチャンス〜」
      講師:株式会社ジェイノベーションズ 代表取締役 大森 峻太 氏
    • 【第二部】東京観光産業ワンストップ支援センターについて(約30分)
           〜 観光関連事業者向け支援制度の紹介 〜
      説明:公益財団法人 東京観光財団
    • 【第三部】個別相談会<東商会員限定・事前申込制>(約60分)
      内容:1社あたり約20分程度の個別相談会
      相談員:大森 峻太 氏・東京観光財団職員
  • 参加費:無料(事前申込制)

本セミナーは、調査で浮き彫りになった「ノウハウ不足」「人材不足」といった課題を解決する実践的なヒントを得られる場です。


まとめ ― インバウンドは可能性の宝庫

今回の調査と事例から得られる示唆は次の3点です。

  1. 多くの中小企業ではまだインバウンド効果は限定的である。
  2. 観光関連業種や地域ではすでに顕著な効果が見られる。
  3. 必要性を感じていない企業が多いが、その背景にはノウハウ・人材・資金不足がある。

インバウンドは一部の観光業だけの話ではなく、工夫次第で幅広い業種に新たな収益機会をもたらす可能性を秘めています。まずは外国語対応やキャッシュレス導入など小さな一歩から始めることが大切です。

そして、その一歩を踏み出すために、東京商工会議所のセミナーなどに参加して最新の情報と実践ノウハウを学んでいただきたいと思います。

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