中小企業を取り巻く経営環境はめまぐるしく変化しています。新しい技術やサービスをどう取り入れていくかは、企業の成長に直結する大きなテーマです。とはいえ、限られた人員や予算のなかで「どこから手をつければよいのか」と悩む経営者の方も多いのではないでしょうか。
そんな時に心強い味方となるのが、スタートアップとの連携です。フットワークが軽く、先端技術やユニークなサービスを持つスタートアップと一緒に取り組むことで、これまでにない解決策や新しい事業の可能性が広がります。
東京都が運営する「NEXs Tokyo(ネックス・トウキョウ)」は、まさにこうした協業を応援するための拠点です。そして今回ご紹介する 第1期「中堅・中小企業向けスタートアップ連携支援プログラム」 は、中小企業が実際にスタートアップとつながり、具体的な成果につなげていくための特別な取り組みです。
NEXs Tokyoとは?中小企業に開かれた成長の場
NEXs Tokyoは、東京都が立ち上げたスタートアップ支援の拠点です。スタートアップ同士や大企業との連携はもちろん、中小企業が参加できる機会も用意されています。
「新しい技術を試したいけれど、どの企業と組めばいいかわからない」
「そもそもスタートアップと接点を持つチャンスがない」
そんな声に応えるために、中堅・中小企業とスタートアップの出会いを後押しするプログラムが用意されているのです。
プログラムの目的:課題解決から新しい成長へ
今回募集が始まった支援プログラムの目的は、とてもシンプルです。
「中小企業が抱える経営課題を、スタートアップのソリューションで解決し、両者の成長につなげる」
たとえば、社内のDXがなかなか進まない、営業活動を効率化したい、環境対応を強化したい──そんな課題をスタートアップと一緒に解決していく取り組みです。
単なる紹介や座学に終わらず、専門家のサポートを受けながら実際に協業に向けた具体的なステップを踏めるのが、このプログラムの大きな魅力です。
応募できる企業とスケジュール
対象となるのは、中小企業基本法や産業競争力強化法に規定される中小企業・中堅企業です。
応募にはいくつか条件があります。たとえば、
- 経営課題を抱えていて、解決手段としてスタートアップとの協業を前向きに検討していること
- プログラム期間(令和7年11月~令和8年2月下旬)に実際に導入に取り組む意思があること
- 導入の意思決定ができる立場の方が参加できること
募集期間は令和7年8月18日から9月19日まで。審査を経て、11月からいよいよプログラムが始まります。翌年3月には成果報告会も予定されています。
プログラムで得られる体験とサポート

採択された企業には、充実したサポートが用意されています。
月2回程度のメンタリングでは、自社の課題を整理しながら協業プランを具体化していきます。また、プログラム期間中には5日程・計10時間程度の専門講座もあり、協業の進め方やオープンイノベーションの考え方を体系的に学べます。
さらに、スタートアップとのマッチング会では、約10社との出会いが用意されています。机上の検討にとどまらず、実際に相性を確かめながら次の一歩を考えることができます。
メリットと注意点
このプログラムに参加することで、中小企業にはいくつものメリットがあります。
- 解決スピードの向上
自社だけでは難しかった課題解決を、先端技術や新しいアイデアで加速できます。 - 新しい可能性の発見
課題解決の先には、新規事業や新しい市場への挑戦が広がることもあります。 - オープンイノベーションの実践
協業の経験そのものが、今後の経営戦略を考えるうえで大きな財産になります。
一方で、スタートアップのソリューション導入にあたっては費用補助はなく、交通費も自己負担です。そのため、導入に向けた予算や意思決定の準備をしておくことが大切です。
一緒に考えながら進めるという視点
中小企業診断士として感じるのは、このプログラムが「伴走型」の支援であるという点です。
「スタートアップと組めばすぐに成功できる」といった単純な話ではありません。むしろ、課題をどう整理するか、どんな相手と組むとシナジーが生まれるかを、一緒に考えながら進めていくプロセスこそ価値があると思います。
ですから、参加を検討される方は「完璧な準備が整っていないといけない」と気負う必要はありません。プログラムのメンタリングや講座を通じて整理していけるのが魅力ですし、その過程で得られる学びや出会いは、必ず今後の経営にプラスになるはずです。
まとめ:未来への一歩を踏み出すきっかけに
「第1期 NEXs Tokyo 中堅・中小企業向けスタートアップ連携支援プログラム」は、中小企業にとって大きな成長のチャンスです。東京都が用意する安心できる枠組みの中で、スタートアップと実際に向き合いながら協業の可能性を探れることは、他にない機会といえるでしょう。
課題解決を出発点に、新しいビジネスの芽を育てる。そんな一歩を踏み出すきっかけとして、このプログラムを活用していただければと思います。
第1期「中堅・中小企業向けスタートアップ連携支援プログラム」応募フォームhttps://forms.office.com/pages/responsepage.aspx?id=8UXaNizdH02vE1q-RrmZIYxo28fAMepDsL_5ri4aey1UNVdBT0Y3VDU2WUhZMDJTOFdXNTNCMEpCSy4u&route=shorturl