「製品開発着手支援助成事業」とは?都内中小企業の技術開発を後押しする助成金を徹底解説

補助金・助成金

「新しい製品を作りたいけれど、どんな素材を使えば良いかわからない」「技術的な課題を検証するための資金が足りない」──
そんな悩みを抱える東京都内の中小企業に向けた支援制度が、「令和7年度 製品開発着手支援助成事業」です。

この助成金は、製品化の前段階にあたる「技術検討」を支援することを目的としており、外部機関(大学・試験研究機関など)を活用して行う調査・検証にかかる経費の一部を助成してくれる制度です。

本記事では、この助成金の目的・内容・申請方法・審査ポイントまでを、わかりやすく解説します。


令和7年度「製品開発着手支援助成事業」とは

 技術的課題の検討を支援し、開発の第一歩を後押し

この助成金の目的は、「都内中小企業による新製品・新技術の開発を促進すること」にあります。
東京都内の中小企業が新しい技術開発に取り組む際、その前段階で行う「技術的な検討」に必要な費用の一部を支援します。

たとえば、次のような場面が該当します。

  • 新素材を使う製品を検討しており、素材の性能を試験したい
  • 新しい構造の実現可能性を確認したい
  • 動作原理の検証を大学などに依頼したい

こうした“開発のための技術検討”を行うときに活用できるのが、この助成制度です。

東京都はこの支援を通じて、中小企業が社外の知見を活用しながら、効率的かつ確実に開発へと進める環境を整えることを目指しています。


助成内容の概要

 助成対象者

以下のいずれかに該当する事業者が対象です。

  • 東京都内に本店・支店を持つ中小企業(法人・個人事業者)
  • 都内の中小企業団体(協同組合など)
  • 東京都内で創業予定の方
  • 都内中小企業によるグループ(共同申請も可)

 助成期間・助成金額・助成率

  • 助成期間:令和8年3月1日~令和9年2月28日(最長1年間)
  • 助成限度額:最大100万円(下限10万円)
  • 助成率:助成対象経費の2分の1以内(千円未満切捨て)

助成金は、事業完了後に報告・審査を経て支払われます。

 助成対象経費

助成対象となるのは「技術検討に直接必要な経費」です。主な対象区分は次の2つです。

  1. 原材料・副資材費
     技術検討で使用する部材、試験用材料、化学薬品など。
     ただし、在庫となる購入は認められず、期間内に使い切ることが原則です。
  2. 委託・外注費
     自社で実施できない試験や分析、評価などを外部に依頼する場合の費用。
     大学や公設試験研究機関との共同研究費も含まれます。

また、市場調査費も上限25万円まで認められていますが、単独での申請は不可です。


助成対象となる事業のポイント

 対象となるのは「開発前の技術検討」

この助成金の最も重要な特徴は、「製品化前の段階を支援する」という点です。すでに研究開発や試作段階に入っている場合は対象外となります。

助成対象となる事業の条件は次の3点です。

  1. 事業化を視野に入れた研究開発の前段階であること
  2. 社外資源(大学・試験機関など)を活用していること
  3. 委託・外注費などを必ず計上していること

一方で、以下のような事業は助成対象外です。

  • 製品企画段階で、技術開発の計画が明確でないもの
  • すでに研究開発や試作に入っているもの
  • 基礎研究や単なる模倣・軽微な改良
  • 設備投資や量産準備を目的としたもの

つまり、この助成金は「作るための検討」を行うための支援であり、「実際に作る」段階には適用されないという点を理解しておく必要があります。


申請スケジュールと手続きの流れ

 年間スケジュール

令和7年度のスケジュールは次の通りです。

項目期間・時期
事前エントリー令和7年10月1日(水)~11月18日(火)17時まで
申請受付期間令和7年11月4日(火)~11月18日(火)17時まで
書類・総合審査令和7年12月~翌2月上旬
交付決定通知令和7年2月下旬予定
助成対象期間令和8年3月1日~令和9年2月28日
実績報告提出助成事業完了後15日以内

申請準備から採択までは半年以上を要するため、早期の準備が成功の鍵となります。


 申請の方法

申請は電子申請システム「Jグランツ」を通じて行います。紙や郵送での申請は受け付けられません。

申請の流れは次の通りです。

  1. GビズIDプライムアカウントを取得(申請には必須)
  2. 東京都中小企業振興公社の専用ページから事前エントリー
  3. 申請書(Excel形式)をダウンロード・作成
  4. 必要書類をPDF化してJグランツにアップロード

提出書類には、登記簿謄本や納税証明書、確定申告書の写しなどが含まれます。
市場調査費を計上する場合は、委託先の会社概要・経歴書も必要です。


審査の流れと採択のポイント

 審査のステップ

審査は3つの視点で行われます。

  1. 資格審査:申請要件や提出書類の確認
  2. 経理審査:財務内容・経費の妥当性
  3. 技術審査:技術内容・市場性・実施体制の評価

書類審査を経て、総合審査で採択企業が決定されます。審査は非公開で行われ、結果はJグランツ上で通知されます。


採択されるためのポイント

技術審査では、次の要素が特に重視されます。

  • 市場性:ニーズや市場規模が明確か
  • 新規性・優位性:既存製品との差別化が明確か
  • 必要性:技術的課題が具体的で、検討の意義があるか
  • 妥当性:経費やスケジュールが現実的であるか
  • 実施体制:社内外の連携が十分に整っているか

採択率を高めるには、「なぜこの検討が必要か」「どんな成果を得るのか」を明確に示すことが重要です。
単なるアイデア段階ではなく、課題を具体化し、解決策を検討する意思があることを示すと良いでしょう。


助成事業の実施から助成金受給まで

交付決定後、東京都中小企業振興公社の職員による「事前支援」が行われ、事業内容や経費管理方法の確認が行われます。

助成事業が完了したら、「実績報告書」と経理関係書類を提出し、完了検査を受けます。
検査では、購入品や支払い証憑の原本確認が行われ、助成対象経費が適正かどうかが審査されます。

完了検査後に助成金額が確定し、請求書の提出を経て指定口座に振り込まれます。
振込まで約1か月程度を要するため、資金繰りには余裕を持たせることが望ましいでしょう。


まとめ:中小企業の“技術的挑戦”を支える実践的助成金

「製品開発着手支援助成事業」は、製品化の前段階にある中小企業にとって、非常に実用的な助成制度です。
開発に着手する前に外部機関と連携し、確かな技術検討を行いたい企業に最適です。

この助成金の最大の魅力は、「リスクを抑えながら新たな挑戦ができる」こと。自社だけでは難しい技術検討を支援機関や大学と連携して進めることで、将来の研究開発や製品化につなげることができます。

ただし、申請には多くの書類準備や手続きが必要であり、スケジュールもタイトです。
そのため、必要に応じて早い段階から専門家等に相談しながら、計画的に進めることが成功のポイントです。

東京都の助成金は年々競争率が高まっていますが、本制度は「製品開発の出発点を支援する」珍しい枠組みです。
自社の技術を次のステージへ進めるきっかけとして、ぜひ活用を検討してみてください。

申請を検討される場合は必ず募集要項をご確認の上、ご不明な点は事務局等にご確認下さい。

募集要項:https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/jigyo/rmepal000000dtcu-att/R7chakushu_bosyuuyoukou.pdf

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