中小企業向け BCP実践促進助成金(令和7年度・第3回)完全ガイド|採択のポイントまで解説

補助金・助成金

中小企業にとって、事業を止めない仕組みづくりは、経営そのものに直結する重要なテーマです。地震や風水害といった自然災害、感染症の拡大など、いつ発生するか分からないリスクは年々高まっており、企業が平時から備える「BCP(事業継続計画)」の必要性は一段と高まっています。

東京都が実施する 「令和7年度 BCP実践促進助成金(第3回募集)」 は、まさにこのBCPの実践に必要な物品・設備の導入を支援し、中小企業の危機管理能力を強化するための助成金です。本記事では、募集要項の内容をもとに、制度の趣旨から申請要件、対象経費、審査ポイントまでを網羅的に解説します。


BCP実践促進助成金とは ― 事業継続のための基盤をつくる支援制度

この助成金は、東京都内の中小企業が、不測の事態に備えた 事業継続のための危機管理対策 を進めるための支援です。募集要項では、この制度の目的を次のように定めています。

「中小企業者等が自然災害、感染症などの不測の事態に備え、事業継続のための危機管理対策を講じることが重要であることに鑑み、その取組を支援し、東京都内の中小企業の振興に資すること」

つまり本助成金は、単なる設備購入費の補助ではなく、
BCPを策定し、それを実際に実行できる状況をつくるための支援 である点が非常に重要です。

防災用品の備蓄、システムのクラウド化、安否確認システムなど、企業が災害直後でも早期に復旧できる体制づくりを後押しする助成金といえます。


助成事業内容 ― 助成対象者・対象事業・助成率・助成限度額

ここでは、事業内容を募集要項に沿って整理します。

 助成対象者

助成対象者は、次のいずれかに該当することが必要です。

  • 中小企業者
  • 中小企業団体
  • 個人事業主
  • 小規模企業者

いずれも、東京都内に本店または支店を有し、1年以上実質的に都内で事業を行っていることが要件となります 。

また、過去に本助成金(単独型)で交付を受けた企業は申請できません。

 助成対象期間(第3回)

助成対象期間は4か月以内で、以下のように規定されています。

  • 令和8年4月1日~令和8年7月31日

この期間内に、
発注・契約・購入(実施)・支払(決済) のすべてを終える必要があります。
短期間での実施となるため、事前準備がとても重要となります。

 助成限度額・助成率・最低額

募集要項では次のように定められています。

  • 助成限度額:1,500万円
    • うちクラウド化の助成上限は 450万円
  • 助成率:中小企業者等は1/2以内、小規模企業者は2/3以内
  • 助成金の下限額:10万円

助成率が小規模企業者で優遇されている点は特に重要です。


助成対象となる事業の内容

助成対象となるのは、BCPに記載された 事業継続のために必要な「基本的な物品・設備」 の導入です。

募集要項には次のような具体例が示されています。

 防災・減災のための物品・設備導入

  • 発電機、ポータブル電源、UPS
    ※売電目的の太陽光利用は不可
  • 従業員の安否確認システム
  • 通信機器を備えたNAS、クラウド型バックアップ
    ※ストレージサーバーは対象外
  • 制震・免震ラック、転倒防止装置、飛散防止フィルム
  • 非常食・簡易トイレ・毛布などの備蓄品
  • 土のう・止水板などの防災設備(ハザードマップの提出が必要)
  • マスク、消毒液などの感染症対策用品
  • 基幹システムのクラウド化(オンプレ同等の機能範囲のSaaS導入)

これらはすべて 事業継続(営業継続ではなく)に必要な最低限の物品であること が求められています 。

 耐震診断

一定条件を満たす耐震診断も対象となっています。

  • 申請者が所有する建物であること
  • 昭和56年5月31日以前の建築
  • 技術評定を伴う耐震診断であること

建物の付属設備のみの診断は対象外となる点に注意が必要です。


助成対象経費の詳細

助成対象経費は大きく3つに分かれています。

 物品・設備購入費

対象となる物品・設備の購入費です。

ただし、備蓄品については、
従業員数 × 3万円 が上限とされる重要な規定があります 。

また、購入品目の総数は 20品目以内 という上限があります。

 工事費等

設置に必要な工事費が対象になります。

  • 労務費は「公共工事設計労務単価」を超える部分は対象外
  • 工事費の助成対象額は 機器本体価格の25%が上限

 クラウドサービス利用料等

クラウド型バックアップやSaaSの利用料が対象です。

  • 助成対象期間内に「契約・利用・支払い」がすべて完了した分のみ対象
  • 前払いの場合も対象期間内分のみ助成

BCP以外の用途(ストレージ利用のみ等)は対象外とされているため、BCPとの関係性を明確にする必要があります。


申請要件 ― 特にBCPの質が重要

本助成金の大きな特徴は、申請に 要件を満たしたBCPの提出が必須 であることです。

提出できるBCPは次の3つのいずれかに限られます。

  • 公社のBCP策定支援事業(平成29年度以降)で作成したBCP
  • 事業継続力強化計画(国の認定制度)に基づいたBCP
  • 東京都または公社の過年度の支援で作成したBCP

また、BCPには以下の記載が必須です。

  • 想定リスク、基本方針
  • 緊急時の対応(安否確認、避難など)
  • 役割分担、対策本部の設置
  • 事業継続計画(重要業務、復旧時間)
  • 発動条件・解除条件
  • 訓練計画
  • 必要物資(品名、数量、理由、設置場所)
  • 基幹システムをクラウド化する場合の記載

BCPに助成対象の物品・設備が記載されていない場合、助成対象外となります。
ここは申請において 最も重要なポイントのひとつ です。


申請方法 ― Jグランツによる電子申請のみ

申請は、国が提供する電子申請システム Jグランツ で行います。

  • 申請には GビズIDプライムアカウント が必須
  • アカウント取得には時間を要するため早めの準備が不可欠
  • 電子申請以外(郵送・メールなど)は受付不可

また、申請書類は非常に多岐にわたり、見積書は原則2社以上 の取得が必要です(一定金額以上の物品・工事) 。


スケジュール(第3回募集)

募集要項に記載されている第3回のスケジュールは次の通りです。

  • 申請エントリー:令和8年1月7日(水)9時~1月14日(水)17時
  • 電子申請受付:同上
  • 交付決定:令和8年3月下旬
  • 助成対象期間:令和8年4月1日~7月31日

短期間での事業実施となるため、事前のBCP整備、見積取得、業者調整が非常に重要です。


審査方法と採択のポイント

審査は「決算書等による経営面の審査」と「総合審査」によって行われます。

 審査項目(4つの視点)

申請資格
経営面の健全性(財務内容など)
BCP内容の妥当性(リスク分析、復旧計画、必要物資の記載など)
設備導入の必要性と妥当性(数量、スペック、価格が適正か)

 採択されるためのポイント

助成金の趣旨に沿って、次の点を丁寧に記載することが重要です。

  • 導入する設備がBCPに明確に記載されていること
  • 必要数量の算定根拠が合理的であること
  • 市場価格と比べて高額すぎないこと
  • 事業継続に必要な最低限の設備であること
  • 設置場所がリスク低減に適切な場所であること

BCPの内容と申請内容の整合性が取れていることが、採択の大きな決め手となります。


まとめ:BCP実践は企業価値を高める投資。助成金を活用し、効果的に取り組もう

本助成金は、BCPを「つくる」段階ではなく、実際に使えるBCPにするための設備導入 を強力に後押しする制度です。災害時に事業が継続できるかどうかは、企業の信用力にも直結し、中小企業にとっては極めて重要な経営課題です。

一方で、申請には、

  • BCPの内容が助成対象物品と整合しているか
  • 見積書や仕様書が揃っているか
  • 助成対象期間内に完了できる体制があるか

といった準備が欠かせません。

しかし、適切に準備すれば 最大1,500万円の助成 を受けられる大変有用な制度です。
ぜひ本記事を参考に、BCPの充実と企業の防災力強化に取り組んでみてください。

※申請を検討される場合は、必ず募集要項をご確認の上、ご不明な点は事務局等にご確認下さい。

募集要項:https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/setsubijosei/rmepal0000023lo1-att/r7_3bcp_youkou.pdf


【要約】

  • 本助成金は、BCP実践に必要な基本的な物品・設備の導入を支援する制度
  • 助成限度額は最大1,500万円、助成率は1/2(小規模は2/3)
  • BCPの提出が必須で、記載内容と申請内容の整合性が審査の重要ポイント
  • 対象経費は物品購入、工事費、クラウド利用料など
  • Jグランツによる電子申請のみ。GビズIDが必須
  • 第3回申請は令和8年1月7日〜14日
  • 審査は「BCPの妥当性」「設備の必要性」「市場価格との整合性」が重要
タイトルとURLをコピーしました