フィットネス市場は、健康志向の高まりを背景に中長期的な成長が見込まれる分野です。その中で、株式会社フィットクルーは「女性専用パーソナルトレーニング」という明確なポジションを築き、2025年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。
本記事では、株式会社フィットクルーのIPO情報を整理するとともに、「事業計画及び成長可能性に関する事項」を読み解きながら、中小企業経営者・支援者にとって参考となるビジネスモデルや競争力の源泉、成長戦略について解説します。単なる企業紹介にとどまらず、「なぜこの会社は成長できているのか」「自社経営にどう応用できるのか」という視点で読み進めていただければと思います。
株式会社フィットクルーのIPO概要と、その背景
株式会社フィットクルーは2025年12月12日、東京証券取引所グロース市場に新規上場しました。上場の目的として同社は、社会的信用力・知名度の向上、優秀な人材の獲得、そして資金調達手段の多様化を挙げています 。
特にパーソナルトレーニングジムという業態では、「人材の質」がサービス価値を大きく左右します。上場企業となることで採用市場における信頼性を高め、優秀なトレーナーを安定的に確保することは、事業成長の前提条件と言えます。この考え方は、サービス業を営む多くの中小企業にも共通する重要な視点です。
会社概要 ― 現場起点で構築されたフィットネス企業
株式会社フィットクルーは2015年設立、大阪市に本社を置くフィットネス関連企業です。代表者は柔道整復師としての現場経験を持ち、「女性を健康に美しくすることで社会を明るくする」という理念のもと事業を展開してきました 。
現在は、女性専用パーソナルトレーニングジム「UNDEUX SUPERBODY」を中核に、継続利用型の「UNDEUX SUPERBODY LIFE」、整形外科医監修の「Dr.plus Fit」、トレーナー養成スクール「プロジム」など、複数のブランドを直営で運営しています。
事業の概要 ― パーソナルトレーニングを軸とした多層的な事業構成
フィットクルーの事業は、単一のジム運営ではなく、「短期集中型」「継続利用型」「医療連携型」「人材育成」という複数の事業レイヤーで構成されています。
短期集中型の「UNDEUX SUPERBODY」は、2~4か月という明確な期間設定と高品質な指導によって、高い顧客満足度を実現しています。一方で、短期で終わらせず、月額制の「UNDEUX SUPERBODY LIFE」や「Dr.plus Fit」へと顧客をつなげることで、継続収益へと転換しています 。
この「入口と出口を設計した事業構造」は、中小企業が顧客との関係性を長期化させるうえで非常に示唆的です。
課題解決と市場 ― 女性フィットネス市場という未開拓領域

日本のフィットネス市場規模は2024年時点で5,389億円と、コロナ前を上回る水準に回復していますが、欧米と比較すると参加率は依然として低く、成長余地が大きい市場とされています 。
特に20~40代女性は、「運動したいが継続できない」「初めてで不安」という理由から、ジム利用に踏み切れていない層が多いことが調査から明らかになっています。フィットクルーは、女性専用・パーソナル指導・安心感のある空間設計によって、この潜在ニーズを顕在化させました。
これは、中小企業が市場を選ぶ際の重要な示唆です。「顕在市場の競争」ではなく、「潜在市場の掘り起こし」こそが、成長の起点となることを示しています。
ビジネスモデル ― 成果体験から継続収益へとつなげる設計
フィットクルーのビジネスモデルの本質は、「成果体験を起点にLTV(顧客生涯価値)を最大化する仕組み」にあります。
短期集中コースで成果を実感した顧客を、アフターコースや月額制サービスへ自然に移行させることで、リカーリング収益比率は年々上昇し、2025年11月期には50%を超える見込みです 。
中小企業経営者にとって重要なのは、「売上を作る商品」と「利益を積み上げる商品」を分けて設計している点です。これは、単価競争から脱却し、安定経営を実現するための王道とも言える考え方です。
競争力の源泉 ― データ×ブランディング×人材戦略
フィットクルーの競争力は、単なるブランド力だけではありません。全店舗直営による運営データの蓄積、マーケティングの内製化による迅速な改善、顧客満足度データの活用など、データドリブンな経営が根幹にあります 。
さらに、トレーナー養成スクール「プロジム」を自社で運営することで、人材の質と量を同時に確保しています。これは「人材不足」という業界共通課題に対する、非常に戦略的な解決策です。
中小企業にとっても、「人が採れない」ことを嘆くのではなく、人を育てる仕組みを事業の中に組み込むという発想は、大きなヒントになるでしょう。
成長戦略 ― 出店拡大とLTV最大化の両立
フィットクルーは今後、都市部だけでなく地方都市や郊外への出店を進めるとともに、ミドルシニア層向けブランドの拡大を計画しています。また、物販やAIを活用した自宅トレーニングなど、サービスの拡張によるLTV向上も視野に入れています 。
注目すべきは、「無理な多角化」ではなく、既存顧客との関係性を深める方向で成長戦略を描いている点です。これは、規模の大小を問わず、持続的成長を目指す企業に共通する考え方です。
中小企業経営者・支援者への示唆
株式会社フィットクルーのIPOと事業計画は、「成長産業に属しているかどうか」以上に、「どのような経営設計をしているか」が成長を左右することを教えてくれます。
・ターゲットを明確に絞り込む
・成果体験を起点に継続収益を設計する
・人材育成を戦略の中核に据える
これらは、フィットネス業界に限らず、多くの中小企業が応用可能な考え方です。
まとめ
株式会社フィットクルーは、女性専用パーソナルトレーニングという明確なポジションを起点に、ビジネスモデルと人材戦略を磨き上げ、IPOを実現しました。その事業計画は、中小企業経営者・支援者にとって「成長する会社の設計図」として読む価値があります。
IPO企業の開示資料は、実践的な経営戦略の宝庫です。フィットクルーの事例を通じて、自社のビジネスモデルや成長戦略を見直すきっかけにしていただければ幸いです。
株式会社フィットクルー:https://fitcrew.co.jp/
株式会社フィットクルー「事業計画及び成長可能性に関する事項」:https://ssl4.eir-parts.net/doc/469A/tdnet/2730227/00.pdf


